じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 昨日に続いて、月と金星と木星。7月19日の夕刻は多少雲が出ていたものの、月齢3.3の月と金星と木星が並んで光っている様子がよく見えた。

 この日は南半球で金星食となった(大部分のエリアでは現地の日中に起こるため、現地に出かけていっても肉眼で見ることはできない)。

2015年07月19日(日)


【思ったこと】
150719(日)「太陽系ミステリー 〜“幻の惑星”が語る創世記〜」

 7月19日に再放送された、NHK コズミックフロント☆NEXT

「太陽系ミステリー 〜“幻の惑星”が語る創世記〜」(初回放送2015年5月21日)

を録画再生で視た。7月11日の日記にも述べたが、最近の宇宙関連番組はここ10年余りのあいだに大きな発見があり、またCGの技術の向上や地デジ化による高精細画面によって迫力ある映像が伝えられるようになり、まことに興味深い。

 この回は、タイトル自体が謎めいていて(←思わせぶりのようにも思えたが)、いったい幻の惑星とは何のことなのか?、太陽の裏側にあって地球からは見えない「第十番惑星」のことなのか? それとも、200年ほど前に地球に6等星クラスの巨大な天体が接近しいったん観測されたものの行方不明になってしまったのか?、と興味がわいてきたが、その正体は準惑星ケレスであった。

 番組の初めのほうではティティウス・ボーデの法則への言及があった。私が子どもの頃は「ボーデの法則」として紹介されており、シンプルであることに加えて、今回話題のケレスや天王星など新たに発見された天体がこの「法則」に従っていることで大いに興味をそそられた。もっとも、最近は「ティティウス・ボーデの法則は、力学的な必然ではなく偶然だという考え方が主流となっている。」そうだ。とはいえ、この「法則」が小惑星や海王星の発見を動機づけたことは間違いない。

 番組の中頃で紹介された「スノーライン」、「グランドタックモデル(Grand Tack)」もまことに興味深い。単に知識として紹介されたのではなく、太陽系の2つの謎「なぜ火星は地球より小さいのか?」、「なぜ異なるタイプの小惑星は、小惑星帯の太陽に近い軌道から遠い軌道の中で混ざり合っているのか」という謎が提示され、このモデルならこのようにうまく説明できる、ということが分かりやすいCGを使って解説されていたのがよかった。このことに限らず、観測データと一致するモデルが提唱され、さらにそのモデルから未知の現象や存在が予測され、再び観測データによってそれが確認される、というプロセスは、科学の発展を示す模範的な事例となっているように思う。

 番組の後半のほうで、ドイツのネルトリンゲンと、そこから40kmほど離れたシュタインハイムに、今から1500万年前、2つの小惑星が一緒に飛んできて落下したという事例が紹介された。この事実だけからは、上掲のボーデの法則と同様の「偶然」かもしれないし、1つの小惑星が地球接近時に分裂したとも考えられるが、番組によれば、地球に接近する小惑星の1/6は二重小惑星であり、どうやら、天体衝突で合体した小惑星が太陽に近い軌道では太陽光によって回転し(ヨープ効果)、再び分裂して二重小惑星になった可能性があるという。そしてそれらの事実を含めて、地球上の水の一部は地球に衝突した小惑星由来のものであるという謎解きに到達した。

 上にも述べたが、この分野の科学では、実験的に検証できることは限られている。観測事実に基づく仮説、その仮説に基づく予測、新たな観測事実による検証、という繰り返しが学問の発展につながっている。その際、観測技術の向上も不可欠ではあるが、仮説を作り出す科学者の創造的能力が大きな力になっていることは間違いない。最近、文学部や社会学部など人文社会系の学部と大学院について、社会に必要とされる人材を育てられていなければ、廃止や分野の転換の検討が求められているというが、いくら理系学部ばかりにしたところで、そこに入学する者に創造性が無ければ、高度な発展は期待できない。領域固有(domain-specific)な創造性も必要だが、その基礎となる普遍的な創造性の開発も必要。こういうことって、文系の研究が役になってきたように思うのだが、それまであっさりと削減してしまってよいものか、気になるところである。