じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 7月18日(土)の岡山は午後になってから晴れ間が広がり、日没後には月齢2.3の月と金星【写真左上】、木星【写真右上】が並んで見えていた。月は、山の端に沈むまでうっすらと見えていた。

 7月19日には月と金星が大接近し、南太平洋では金星食になるという。日本でもかなり接近した様子が見られるはずだが、岡山の予報は曇りとなっていて微妙。

2015年07月18日(土)


【思ったこと】
150718(土)『嫌われる勇気』(17)優越性の追求、見かけの因果律

 昨日に要約・引用した8点のうち6.〜7.について私なりの考えを述べることにしたい。
  • 6.人間は、無力な状態から脱したいという普遍的な欲求を持っている。アドラーはこれを「優越性の追求」と呼んでいる。【79頁】「優越性の追求」や「劣等感」は、健康で正常な努力と成長への刺激である。【80頁】
  • 7.「劣等コンプレックス」とは、自らの劣等感をある種の言い訳に使い始めた状態のことを指す。【82頁】
  • 8.本来はなんの因果関係もないところに、あたかも重大な因果関係があるかのように自らを説明し、納得させてしまうことをアドラーは「見かけの因果律」として退けている。【82〜83頁】

 まず6.については、私は、全く別の見方をしている。行動が増えたり、精緻化したり、連携したりするのは、強化理論により説明可能。無力な状態から脱したいという欲求があろうが無かろうが、何らかの行動が自発されて強化されるならば、その行動はますます活発になる。通常、自然環境の中では、適応的な結果をもたらす行動は強化され、有害な結果をもたらす行動は弱化されていく。よって、自然環境に関わる人や動物は、自然随伴性により、結果的に優越性が追求されていく。また、集団内においては、集団全体にとってプラスになるような行動は付加的に強化されていく。また、集団内での適度な競争的環境は、量的、さらには質的な向上をもたらす。とはいえ、競争的環境がエスカレートすると、お互いの足を引っ張ったり、少数の勝ち組と多数の負け組に分断され、集団の構成員は利己的に振る舞うようになり、協調体制にヒビが入る恐れがある。よって、集団を維持するためには、協力的な行動や相互に助け合う行動が強化されていかなければならない。

 いっぽう、なにをやってもうまく強化されないような状況が長引くと、人も動物も学習性無力感に陥る。上掲の「欲求論」では「無力な状態から脱したいという普遍的な欲求を持っている」とされているが、こうなると、どのように手を尽くしても「欲求」なるものを絞り出すことはできない。必要なことは、行動の自発機会を増やし、それを適切に強化していくことだ。

 7.については定義上の問題なので特に意見はない。指摘されているように、日本では、「コンプレックス」を「劣等感」と同じ意味に使われていることが多いように思う。【こちらを見ると、ネット上で「コンプレックス」がどのような場面で使われているのかが分かる】。

 「自らの劣等感をある種の言い訳に使う」ことに似た現象としては、自己ハンディキャップ行動(わざと不利な行動をとる)、「自己ハンディキャップ自己報告」(言い訳を用意)があり、同じ枠組みで検討していくほうがよいように思う。

 最後の8.であるが、「見かけの因果律」は、エセ心理学が広く流通していることにも一因があるのではないかと思う。例えば、アダルトチルドレンを誇大に解釈して、ボクも、ワタシも、...と、現在の自分の問題点を過去の出来事のせいにしようとする人たちがいる。また、各種の性格診断占いでは、本来、個体差を記述的に分類しただけの概念があたかも原因であるかのように誤用されている。本書が指摘している「過去のせいにしない」という点は大いに賛同できる。

 不定期ながら次回に続く。