じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 5月8日午前、産業医・安全衛生部による職場巡視が行われ、私も随行した。1号館の各階の電源コード、落下物防止、防火、避難設備などを点検したあと、屋上に上がった。普段は立ち入り禁止となっており、これまで3回程度しか上がったことがなかった。定年退職まで2年11ヶ月ということもあり、屋上からの景色を眺めるのはこれが見納めになることだろう。


2015年05月8日(金)


【思ったこと】
150508(金)NHK「ドキュメント72時間」のやらせ疑惑

 Newsポストセブン 坂本一生氏 勤務していた便利屋のNHK番組でのやらせを告発

というネット記事が目にとまった。取り上げられたのは、NHK「ドキュメント72時間」で2月13日に放送された「便利屋、都会を走る」であった。

 番組の中で、元公務員の61歳の女性が定年祝いに娘たちからプレゼントされたマッサージチェアを貰ったが、重くてかさばっているために自力では自宅の2階まで運び上げることができないという相談が寄せられた。しかし、リンク先の記事によれば、「この女性は現社長A氏(放送当時は取締役)の奥さんの母親、つまりA氏の義理の母です。マッサージチェアが搬入された家は奥さんの実家です。私はお助け本舗を紹介する別の番組のロケで何回かこの家を訪れていたのですぐにわかりました」とのことであった。便利屋の会社の親族がサービスを利用するということはあり得ないわけではないが、72時間という定点観察の時間内に依頼をかけるというのは偶然というにはあまりにも不自然すぎる。また、本来、娘たちであれば、マッサージチェアの置き場所や配達方法ぐらいは配慮しているはずで、母親が困るような中途半端なプレゼントはしないはずであろう。

 もう1つ、番組では、37歳の女性会社員から、「お風呂にナメクジがいるんです。それを取っていただきたいんですけど!」という依頼がかかり、6800円払って、真新しいバスタブにへばりついていたナメクジ2匹を除去するというシーンがあったが、リンク先の記事によれば、これも「“夜中にナメクジが出ると面白い。ゴキブリなら逃げられるけど、ナメクジは逃げないからちょうどいい”と決まりました。撮影初日の朝に4〜5人の社員でミーティングし、Bさんの指示でナメクジを浴室に置く段取りを確認しました。」という、やらせであったと指摘されている。確かに、そもそも、何も餌の無いはずのユニットバスにナメクジが棲み着くはずがない。また、仮に棲み着くとしても、じめじめした排水溝のあたりでじっとしているはずで、わざわざバスタブの上のほうまで這い上がってくるというのは不自然過ぎる。リンク先の記事では、この時の依頼主女性も「スタッフのひとりの知人で、撮影当日、依頼の電話が鳴る30分前にそのスタッフが“依頼者宅”に向かい、ナメクジをセッティングしていました」と記されていた。

 この番組については、私自身も、2月14日の日記で取り上げており、「話題性を高めるために、ヤラセっぽい事例を3日間に集中させたという可能性もある。日常業務の大半はもっと地味ではないかという気がしないでもない。」と締めくくっていたが、改めて録画再生してみると、上記のナメクジ事件のほか、「ジグゾーパズル完成の代行」、「思い出の店のケーキを買って来て」など、72時間の中で依頼される内容にしては、派手なものが多すぎる点は否めないように感じた。

 ちなみに、冒頭のマッサージチェアの運搬については運営会社社長のA氏は「マッサージチェアを運び込んだのは確かに妻の実家です。一般のお客様と同じように依頼を受けていたところ、たまたまテレビの取材が来ていたので放送しただけです。これが何か問題になるのでしょうか?」というように、事実関係を認めているという。「たまたま」が本当に「たまたま」だったのかは疑問が残るが、この種の依頼は、便利屋業務としては有りがちであり、やらせとして糾弾されるほどのことはないかもしれない。

 そういう意味では、ナメクジ事件のほうがもっと深刻である。真相の解明が待たれるところだ。

 ドキュメント72時間は私も時たま録画しているが、Topページのコンセプト:
人々が行き交う街角。そこに足をとめ、通りすがりの人に目を向けてみる。
カメラを据えて3日間、72時間。
同じ空の下、同じ時代に、たまたま行き合わせた私たち。
みんな、どんな事情を抱え、どこへ行くの?― ドキュメント72時間
想像をはるかに超える、多様で生き生きとした、人々の「いま」が見えてくる。
は、事実そのものであれば大きな感動を生む。しかしそれだけに、「たまたま行き合わせた」というのがヤラセであると気づくと、騙されていた、裏切られた、という反発を生む。72時間の「たまたま」だけで典型事例のサンプリングができる可能性は少ないし、話題性のある特殊事例が頻発する可能性はさらに少ない。いっそのこと、もっと長い期間をかけて現場を取材した上で、真夜中のパン屋さんのようなドラマ仕立てにしたほうが誠実な内容になったのではないかという気もする。

 あと、私自身も、ローカル番組の取材に何度か協力したことがあるが、NHKのドキュメンタリー番組の多くは、実際には、NHKの正社員ではなくて、番組制作の子会社(下請け会社?)のようなところが作っているようである。となると、子会社としては、できるだけ話題性があり視聴率アップにつながるように、どうしても演出をせざるを得なくなる。これが、過度な演出や「やらせ」の一因になっている可能性にも目を向ける必要がある。ここで突然思い出したが、1月に視た世界の果ての通学路【公式サイトはこちら】なども、フィクションとして視るなら感動的だが、あれが日常の通学風景だとしたらあまりにも不自然と言わざるを得ない気がした。