じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 NHK「オックスフォード白熱教室」第4回の初めのあたりで、無理数に関連してピタゴラスの名前が登場した。ウィキペディアによれば、ピタゴラスはイオニア地方のサモス島で紀元前582年に生まれた。写真は、昨年夏に撮影したサモス島(左側の島)。真ん中の島をはさんで、右側はトルコ。


2015年02月7日(土)


【思ったこと】
150207(土)オックスフォード白熱教室(17)海王星の発見/無理数

 2月5日の続き。放送第4回は、

数学が教える“知の限界”

というタイトルのもとに「無理数」、「カオス理論」、「不完全性定理」、さらに「無限にもいろいろある」という話題が取り上げられた。数学は日常生活を解き明かす最も有効な言語であり、世界の始まりについて理解、さらには様々な現象の予測に不可欠となる。

 冒頭、数学が未知の天体の予測に役立った例として海王星の発見が取り上げられた。ウィキペディアには、
天王星の発見後、その摂動から、未知の惑星が存在すると考えられるようになった。フランスではルヴェリエが予想軌道を算出し、それを受けたガレが1846年9月23日に発見した。一方イギリスでは、アダムズが予想軌道を算出し、ジェームズ・チャリスに報告した。チャリスはあまり気の進まないまま、1846年7月から探索をはじめ、アダムズの予測位置付近の星の位置の記録を始めた。そしてガレの海王星発見の後、実はその1ヶ月前にチャリスは2度海王星を観測していたが、新惑星であることを見落としていたことがあきらかになった。このため、アダムズとルヴェリエは発見者は誰かという事で揉めたが、アダムズはルヴェリエに発見者の座を譲った。現在では2人とも発見者の扱いとなっている。
と記されているが、今回の講義では、フランス人のルヴェリエの名前だけが紹介されていた。またまた、英語版では
...Eventually an international consensus emerged that both Le Verrier and Adams jointly deserved credit. Since 1966 Dennis Rawlins has questioned the credibility of Adams's claim to co-discovery, and the issue was re-evaluated by historians with the return in 1998 of the "Neptune papers" (historical documents) to the Royal Observatory, Greenwich. After reviewing the documents, they suggest that "Adams does not deserve equal credit with Le Verrier for the discovery of Neptune. That credit belongs only to the person who succeeded both in predicting the planet's place and in convincing astronomers to search for it."
と記述されており、天文学の発見においては、予測と検証の両方が揃うことが重視され、アダムズとルヴェリエの2人とも発見者の扱いという主張には否定的な見解が紹介されていた。

 さて本題に戻るが、1番目の無理数については、まず、無理数が何らかの既約分数で表されると
  • 例えば、√2=n/mで表されるとすると、m、nの少なくとも一方は奇数でなければならない(両方とも偶数であれば、それぞれ2で割れるので既約分数にはならない)
  • √2=n/mの両辺を2乗すると、2=(n/m)2となり、左辺は偶数だが右辺は奇数となって矛盾する
という背理法により、無理数は既約分数の形では表せないことを示していた。

 もっとも、この証明のやり方においては、n/mが既約分数でなければならないという前提は必ずしも必要ないようだ(こちら参照)。

 あと、この証明法は、√2や√5などの平方根が有理数でないことの証明に一般化できるが、例えば円周率πやネイピア数eチャンパーノウン定数の無理性の証明には使えない。またオイラー定数 γ、 π+eeπ、 eeπe、 ππ といった数は未だに有理数であるか無理数であるかは知られていないそうである。要するに、この世界のすべて数を有理数だけで表すことはできないという反例の提示はできるが、ある数が有理数か無理数かを判別する方法は個別的であるようだ。

 次回に続く。