じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 2月5日の岡山は、何度か俄雨が降ったが、1時間あたり0.5ミリ以上とはならず、気象庁の統計上は、降水量0.0ミリとなった。写真は、雨が降ったことを証拠づける、時計台前の水たまり。


2015年02月5日(木)


【思ったこと】
150205(木)オックスフォード白熱教室(17)黄金比、白銀比、...

 第3回では、音楽の話題に続いて、建築に現れる縦横比の話題が取り上げられた。

 まずは、フィボナッチ数列黄金比の関係について説明があった。実際の縦横比は、

1:(1+√5)/2≒1:1.1618...

となる。番組ではこのほか、白銀比(1:√2、あるいは1:1+√2)が取り上げられていた。1:√2は上にも述べた紙のサイズ(A3とかB4判)として広く用いられている。√2に1を加えて1:1+√2が日本の建築で好まれているというのは知らなかった。ネットで検索したところ、「見返り美人図」や雪舟の「秋冬山水図」など日本絵画では1:√2の配置があるらしいことが分かった。 。

 ウィキペディアによれば、黄金比、白銀比は貴金属比の一種であり、一般的には二次方程式

x2 - nx - 1 = 0

の正の解を貴金属数(metallic number)という。nに対応して第n貴金属数といい、特に第1貴金属数 (1+√5)/2 は黄金数、第2貴金属数1+√2は白銀数、第3貴金属数 (3+√13)/2 はを青銅数と呼ばれる。また、これらの数と1との比は、貴金属比と呼ばれる。

 上記のところで、白銀比は「1:√2、あるいは1:1+√2」と書いた。白熱教室では「1:1+√2」を白銀比と呼びつつ、字幕で「1:√2」を白銀比と呼ぶこともあります、という断り書きが表示された。ウィキペディアでは、1:(白銀数マイナス1)を白銀比と定義していたが、上記の貴金属比の定義とは矛盾している。いっぽう、紙のサイズ(A3とかB4判)は「白銀長方形」と呼ばれており、この場合は、1:√2でなければならない。

 番組、あるいはこちらに紹介されているように、黄金比や白銀比はさまざまな芸術作品や建造物に取り入れられている。

 ここで問題になるのは、黄金比や白銀比の長方形が本当に美しいのかどうか?である。「黄金比は美しいと言われている」と言われ続けることでそれに同調したり、特定の美的感覚が埋め込まれているだけかもしれない。そうではなく、何らかの神経生理学的根拠があるのか? このあたりは何とも言えない。

 もし、黄金比や白銀比が美しいというなら、日常生活場面で見かけるさまざまな長方形も、この比率となるはずであるが、実際はどうだろうか? 以下、いくつかの具体例を示す。
  • 名刺サイズは、「日本の標準サイズは91ミリ×55ミリ。欧米の標準サイズは3.5インチ×2インチ(89ミリ×51ミリ)。他に3号サイズ(49ミリ×85ミリ)や小型4号サイズ(70ミリ×39ミリ)もある。」と記されており、日本の標準サイズの場合は、1:1.6545...、欧米の標準サイズは1:1.745...であって、必ずしも黄金比ピッタリではなさそう。また、クレジットカードやプリペイドカードなどの縦横比は、53.98:85.60=1:1.58577...、あるいは、57.5:85.0=1:1.478...などとなっていて、黄金比よりは正方形に近い比率になっていた。
  • 官製はがきのサイズは100.0mm×148.0mm。もっとも私が子どもの頃は90mm×140mmであった。こちらに、現在の葉書サイズは万国郵便連合(UPU)で決議されたサイズに合わせたと記されているが、なぜUPUがこのサイズに定めたのかは不明。このほか紙の寸法についてもウィキペディアに詳しい説明があった。
  • 紙幣のサイズはマチマチであって、縦横比はあまり考慮されていないように思える。現行の紙幣は
    • 一万円券 76×160
    • 5000円 76×156
    • 2000円 76×154
    • 1000円 76×150
    となっている。じっさい、自販機などに紙幣を挿入するさいには横幅の広いほうが手に持ちやすい。
  • 日常生活によく出てくる長方形としては、テレビ画面がある。地デジ前は3:4であったが、地デジ後は9:16=1:1.7777...で、これも黄金比よりは長い。パソコンのディスプレイも最近では9:16の横長型が殆どであるように思う。【私が研究室で使っているのは、1080×1920】
  • 日本人に馴染みの畳の縦横比は1:2になっている。これは、美しさがどうということよりも、四畳半、六畳間、といった部屋に敷き詰める都合によるものと思われる。
 ということで、日常生活によく現れる長方形の中で、黄金比や白銀比にピッタリのものはむしろ少ないということが明らかになった。

次回に続く。