じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 文学部はほぼ東西方向に建てられているので、春分の日と秋分の日の前後は、西側のテラスからの夕日が廊下の奥まで射し込む。昨年の写真が2013年9月24日の日記にあり。


2014年9月25日(木)

【思ったこと】
140925(水)日本心理学会第78回大会(16)ACTとマインドフルネス(11)指定討論(3)心理療法の効果(2)

 昨日の日記で、心理療法の効果については、
  • 科学的な効果検証は引き続き進めていく必要があるとは思う。
  • 仮に100人中99人には無効であっても、残りの1人には有効という薬があるなら、その1人に対しては薬の投与を続けるべきであるとは思う。
  • 心理療法の場合はさらに、クライエントの個々の要因が大きく反映するため、万能な療法や疾患特異的な療法だけでなく、その個人に特異的に有効な療法というのもの見つけていく必要があるように思う。その場合は、平均値的な効果の比較ではなく、効果が及ぶケースと及ばないケースの範囲の同定や、見極めの基準をしっかり確立することが大切であろう。
と述べた。この種の議論については過去にも何度か述べたことがあり一部その繰り返しになるが、要するに、心理療法、園芸療法、音楽療法、あるいはダイバージョナルセラピーで用いられる各種の技法などの活用は、個人本位で、それぞれに合った形で行うことが大原則であると思う。また、特に高齢者ケアの場合には、何かを治す補助手段としてセラピーを行うよりも、セラピーに参加すること自体が生きがいをもたらす生活の一部でなければならないと考えている。まもなく年次大会が行われる園芸療法などもそうだが、何かの機能改善の手段として園芸活動をするのではなく、園芸自体が楽しみでなければわざわざ参加する意味はない。セラピーの効果はあくまで「その結果として」ついてくるものであるべきだと思う。

 もちろんそういう中にあっても、個人内でのシングルケースデザインによる効果検証は必要である。また、より実践的には、個人単位において、事前の評価がしっかり行われ、事後の変化を継続的に記録し、必要において改善を行うという、Assessment→Planning→Implementation→Evaluationのサイクルが求められる。

 但し、以上に述べたことは、人的にも金銭的にも比較的コストがかからず、比較的容易に実施できるような対象に限られていることにも留意する必要がある。現実には、何かを実施するには相当の時間と人とお金がかかる。それゆえ、公平な資金配分(→実質的にはヘルスケアのコスト抑制)という観点から、最大多数にとっての有効性が検証されているような心理療法に限って保険を適用するということがどうしても必要になってくるとは思う。

 また、公的な資金の投入や公平な負担といった問題は別として、個々人が思い込みだけで、インチキな民間療法に多額の私費を投じることはよろしくない。最低限、「この療法については、この程度の効果が確認されています(あるいは、全く、効果が検証されていません)」という情報を提供する必要はある。

 次回に続く。