じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 昨年初めて巣をつくったコシアカツバメが、再び子育てを始めた模様。この巣は春先にスズメに乗っ取られてしまったが、いつの間にか奪還できたようで、鳴き声がコシアカツバメに変わっていた。ツバメたちの生育を眺めるのは楽しみだが、糞害がものすごい。


2014年5月27日(火)

【思ったこと】
140527(火)長谷川版「行動分析学入門」第7回(14)好子出現の随伴性による強化(21)部分強化と強化スケジュール(8)いろいろな強化スケジュール(1)定時隔スケジュール(1)

 ここまでのところ、強化スケジュールのなかで、比率スケジュール(定比率スケジュール、変比率スケジュール)の話題を取り上げてきました。ここでもう一度復習すると、強化スケジュールとは、1回ごとの行動をどのような確率で強化するか(ここでは、好子出現の随伴性のみを扱っていますので、「毎回の行動の直後にどのくらいの大きさの確率で好子を提示するのか」と同義になります)を定めたプログラム(手順書)のようなものです。【5月21日および5月22日の記事参照】

 『Schedules of reinforcement』(Ferster & Skinner, 1957)以来、強化スケジュールについてはさまざまな研究が行われていますが、ここでは、すでにご紹介した比率スケジュール以外の代表的なスケジュールとして、
  1. 定時隔スケジュール(Fixed Interval schedule)
  2. 変時隔スケジュール(Variable Interval schedule)
  3. 定時スケジュール(Fixed Time schedule)と変時スケジュール(Variable Time schedule)
  4. 並立スケジュール(Concurrent schedules)
を取り上げることにします。

 まず1番目の定時隔スケジュール(Fixed Interval schedule)というのは、
  • 前回の好子が出現したあと、一定時間以内に行動しても全く強化されない(次の好子が出現する確率はゼロ)
  • 前回の好子が出現したあと、一定時間が経過したあとの最初の行動は100%強化される(次の好子が出現する確率は100%)
というものです。定時隔という名称は、今述べた一定時間を意味しており、Fixed Intervalのイニシアルをとって、「FI 60秒」、「FI 5分」、...というように表記されます。「FI 60秒」であれば、いったん好子が出現してから60秒が経過すれば次の好子が出現するようになります。いっぽう、60秒経たないうちはいくら行動しても何も得られません。

 この「定時隔(FI)スケジュール」は実験的行動分析ではきわめて有用ですが、日常生活場面から該当する事例を見つけることは殆どできません。というのは、実験動物とは異なり、人間は普通、時計を使って行動しているからです。「FI 60秒」という時隔が設定された場合、動物は、45秒、50秒、55秒というように、60秒に近くなればなるほど活発に行動するようになります(累積記録では波形になることから「スキャロップscallop」と呼ばれます)。しかし、時計が利用できる人間であれば、直前の55秒くらいまではゆっくり休憩し、59秒になった時点で次の行動を始めることでしょう)。

 毎週のレポート課題を提出して成績評価を受けるというのは、形式上は「FI 一週間」という時隔スケジュールに似ています。しかし、1回の行動と異なり、レポート課題の場合は準備が必要です。また、通常は提出期限(リミテット・ホール)が設定されています。杉山ほか(1998、128-130頁)では、定時隔スケジュールとレポート課題作成行動の違いについて詳細に考察されています。

 このほか、サラリーマンの月給、週休、あるいはパートタイムの時給なども、形式上は定時隔スケジュールに似ているものの、大きく異なっている特徴もあります。定時隔スケジュールでは、一定時間(期間)の経過後の最初の行動は100%の確率で強化されますが、給料日の前日まで仕事をさぼっていて給料日だけ一生懸命働くようなサラリーマンはすぐにクビにされてしまいます。【但し、出来高払いの定比率スケジュール労働とは異なり、純粋な時間労働制のもとでは、一生懸命働けば働くほど給料が増えるというものでもありません。】


次回に続く。