じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 5月9日の早朝、岡大構内はうっすらと霧に包まれていた。いつもの散歩コースを変更し、時計台前まで行ってみた。写真は上から、時計台前、岡大・南北通り(岡大西門から南方向)、農学部農場と半田山。


2014年5月8日(木)

【思ったこと】
140508(木)長谷川版「行動分析学入門」第5回(6)好子出現の随伴性による強化(6)習得性好子(3)般性習得性好子

 昨日までのところで述べたように、新たに形成された習得性好子が新たな裏付け好子となって、さらに新しい習得性好子が作り出されていきます。現代社会では、新たな商品開発やコマーシャルの中にその応用例を見ることができます。

 そもそもブランド品というのは習得性好子の代表であり、また、テレビのCMで、当該の商品を美しい自然風景や子どもの笑顔と対提示するというのも、まさに、風景や笑顔を裏付け好子として、当該商品の習得性好子としての機能【行動を強化する力】を高めようとしている操作であるとも言えます。

 さて、習得性好子の中でも強力で安定した強化力を持っているのが「般性習得性好子(はんせい・しゅうとくせい・こうし)」です。習得性好子は少なくとも1つの裏付け好子があれば好子としての機能を維持できますが、般性習得性好子の場合は、多数の裏付け好子が一対多対応の形でそれを支えています。その代表は、お金です。お金は、衣食住に関わるあらゆるモノや様々な人的サービスと交換できます。つまり、お金の裏付け好子は、それと交換可能なすべてのモノや出来事ということになります。このほか、クレジットカード利用時に付加されるご利用ポイント、歳末セールで貰える福引き券、ゲームの獲得ポイントなども般性習得性好子と言えます。

 般性習得性好子が強力で安定した強化力を持っている最大の理由は、飽和化といった確立操作や好みの個体差の影響を受けにくいことにあります。例えば、整理作業をしてくれた学生に、お礼としてカレーライスを用意したとします。しかし、これではカレーライスが嫌いな人の行動を強化することはできません。また、いくらカレー好きであっても、毎日毎日カレーばかり提供していたのでは飽きてしまいます(=飽和化)。代わりに、お金や商品券でお礼をすれば、学生は、それを使って好きなモノと交換することができます。カレーは嫌いだとか、カレーばかりで飽きるといった問題は起こりにくくなります。

 ところで、般性習得性好子の中には、生得性好子であると錯覚しやすいモノも含まれている可能性があります。1つの社会の中で形成される般性習得性好子は、その社会の文化や習慣、道徳等を強く反映するため、あまりにも共通性がありすぎて、生まれつき備わっていたと錯覚されやすいのです。

 スキナーは『科学と人間行動』の中で、般性習得性好子でありながら生得性好子のように錯覚されてしまう事例として、「注目」、「承認」、「愛情」、「従順」をあげています。以下の引用部分はいずれも『科学と人間行動』の第5章(原書78頁)から。訳は長谷川による。【1999年2月15日の日記の再掲】
  • 注目:
     人々から注目されることが強化的であるのは、それが他の強化を得るための必要条件になっているからである。いっぱんに、注目してくれる人々だけが私たちを強化してくれるのである。特に強化を与えてくれる可能性の高い人々からの注目、つまり両親や先生や恋人からの注目は、特に良好な般性好子である。それゆえ、注目を得るための行動が特に生じやすい。特別の注意をひきつけるための言語反応も多い。“ほらそこ(Look)”、“ごらん(See)”、あるいは名前を呼びかける呼格の用法などがこれにあたる。注目を得るという理由で広く生じやすい特徴的な行動としては、他に、仮病、うるさくする、目立ちたがる(自己顕示癖)をあげることができる。
  • 承認:
     注目だけでは不十分な場合も多い。承認してくれた範囲の行動に限って強化してくれる人も別にいる。となると、その人が示す承認のしるしは何であれ、それだけで強化的になる。微笑みをもたらしたり、“そのとおり”とか“よし”とか、その他、賞賛を示す言語的反応は何であれ強められる。この般性好子は、特に教育場面で、行動を持続させたり作り上げたりする目的で使われる。例えば、子供でも大人でも、正しく話せるように教育する場合、適切な行動が生じたときに、“その通り”という言葉を与える。
  • 愛情:
     さらにもっと強力な般性好子として、愛情がある。これは、一次好子としての性的交渉と特に密接な結びつきがあるだろうが、愛情を示す者は誰でも他の種類の強化も与えてくれるので、その効果は般化する。注目や承認や愛情を定義したり、観察したり、測定したりするのは難しい。それらはモノではなくて、行動の様相である。その物理的特徴の表出は微妙であり、それらを研究対象とする科学者ばかりでなく、それらによって強化される個人にとっても、困難を伴うものである。誰かが注目しているとか、承認しているとか、愛情を示している、といったことが容易に分からなければ、私たちの行動が強化される環境は一貫性を欠くことになる。となれば、行動が弱くなったり、間違った時に生じたりする恐れがある。注目や愛情を得るには何をすればよいのか、あるいはいつそれをすればよいのか、については何も分からない。注目を得ようと躍起になっている子供、愛情のサインを熱望する恋人、プロとしての賞賛を求めている芸術家は、辛抱強く待つ行動を示す。これは6章で論じるように、間歇強化の結果としてのみ、生じるものである。
  • 従順:
     これ以外の般性好子としては、他者への従順があげられる。いろいろな強化を与えるように無理強いさせられると、その人の黙従を示す姿勢は、何であれ般性好子となる。ガキ大将は、相手が臆病な姿勢を示すことで強化される。支配階級に属する者は、敬意を払われることで強化される。威厳や尊敬も、他の人々は特別の振る舞いをすることが保証される限りにおいて般性好子となる。わがままを通し続けるのが強化的であるのは、制御のために制御をするような人々にみられる。注目や承認や愛情が微妙であるのに対して、服従の物理的表出はもっと目立つ。ガキ大将は自分の縄張りにはっきりとした目印をつけることにこだわるだろう。また儀式をとりおこなえば、身分の差や自分への敬愛が強調される。


次回に続く。