じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 3月12日早朝の南の空。南東の空に輝く金星のほか、4月14日に地球最接近(今回は0.6176auの小接近)を迎える火星が目立つようになってきた。このほか、さそり座の3つ並んだ星の中央、さそり座デルタ星が明るい。ネットで検索した限りでは、最近、極端な増光は見られていないようだが、他の2つの星よりは明るい。


2014年3月12日(水)

【思ったこと】
140312(水)コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン:平成22年度採択プロジェクト成果報告シンポジウム(4)新たな高齢者の健康特性に配慮した生活指標の開発(3)

 昨日に続いて、表記のシンポジウムのメモ・感想。

 「新たな高齢者の健康特性に配慮した生活指標【以下、JST版と略す。JSTは独立行政法人 科学技術振興機構Japan Science and Technology Agencyの略)】は、こちらの取材記事を要約すると、
  • コンセプトは「一人暮らしの高齢者が自立し、活動的な日常生活を送る上で必要な活動・機能・能力の指標」
  • JST版は項目のレベルが高いので、地域で普通に生活している前期高齢者に向く。もうちょっと年齢の上がった後期高齢者や、比較的虚弱になっている要支援レベルの人、介護予防対象者(要支援・要介護になるおそれがあると認定された高齢者)などを含めたグループを調べたい場合には、JST版だけだとレベルが高すぎて低い得点しか取れない人が多くなってしまう。この場合、老研式と組み合わせて使うことでより広範囲のグループを一元的に見ることができる。
  • 介護保険を申請する人たちは高齢者全体の15%。残りの85%、200万人以上の方たちに老研式を使うわけですが、この膨大な数の人たちの多くが満点では健康度の階層性がわからない。もっと高い能力を測る指標としてJST版が有用。
  • 高齢者の健康状態や社会的活動が弱ってきたというような状態をより早く把握し、その後の状況を予測することができるので、専門家向けにはより早期の介護予防・孤立予防のツールとして役立つ。
  • 地域住民全体の健康度・活動度の診断や介入の評価に用いることができるので、自治体や研究者の方には行政施策の基礎資料になる。個人の機器利用や活動参加への準備性、サポート内容について診断的評価ができるので、民間事業等での新規の機器開発を促進するツールとしても使える。
  • 老研式よりもさらに高いレベルの方たちをターゲットにしているので、「できる」ことは前提として、健康行動の結びつく社会的活動については「している」か「していないか」に焦点を当てた。能力ではなくて「生活習慣」を聞いている。持っている能力を、日常生活、日常行為の中で習慣化して使っているかどうかを聞きくこと、つまり「できる(can)」ことを「している(do)」ことが重要。

ということになるかと思う。

 余談だが、私自身がこれら16項目に回答したとすると、「新機器利用」と「情報収集」は満点だが、町内会や地域の行事には全く関心が無いので「社会参加」はゼロ点、また、他者の世話は苦手なので「生活マネジメント」は半分くらいの点になるようだ。「社会参加」のような面倒なことをするくらいなら、どこかへ旅行するか、一人で園芸作業でもしたほうがよっぽど充実した日々になるように思える。ま、そんなこともあって、私自身としては、人付き合いを好まないお年寄りのQOLを向上させるという課題に、人ごとでは済まされないという覚悟で取り組んでいるところではある。

 ところで、各質問項目の意味内容をどうとらえるかについては、研究分野や質問紙尺度に対する考え方によってもいろいろと議論があるようだ。私個人は、心理学の中でもかなり原則論を重視する立場をとっているので、質問の意味内容をそのまま事実としてとらえることには反対である。

 例えば、「私は神経質だ」という質問に「はい」と答えた人は必ずしも神経質とは限らない。むしろ「いいえ」と答えた人のほうが、自分の本性を明かしたくないという態度をとったという点で神経質かもしれない。であるからして、「私は神経質だ」が質問紙尺度の質問項目として採用されるかどうかは、それに「はい」と答えた人と「いいえ」と答えた人の比率が半々くらいであるか(通過率の問題)、また、神経質かどうかを測る別の尺度の総得点を比較したところ、「はい」と答えた人と「いいえ」と答えた人の間で有意な差があったか、他の項目との相関が高いかどうかという点を調べて、純粋かつ客観的に、統計的処理を行った上で決められなければならない。その結果として、「私は神経質だ」に「いいえ」と答えた人が神経質と判定される可能性もないとはいえない。

 この手法で一貫させると、例えば、
  • 私は、ドジョウだ。
  • 私は、アイウエオよりはカキクケコである。
  • 新聞の社説を毎日読む。
などといった質問も、何かを測る尺度の質問項目として採用される可能性がある。くれぐれもお断りしておくが、上記の3項目は、事実を確かめているのではない。「新聞の社説を毎日読む」という質問は、某心理テストでは、自分をよく見せかけようとしているかどうかを測る質問の1つとして採用されているほどである。

 昨日の日記で、
...相関の高い質問項目はどちらか1つだけに絞られる。なので、選ばれた質問それ自体を改善して得点をアップさせたからといって、測ろうとしていた状態が改善されることには必ずしもつながらない。例えば、「ビデオやDVDプレイヤーの操作ができるますか」に「いいえ」と答えた人に操作法を伝授すれば、「新機器利用」の得点は1点増えるが、だからといってその人が新機器利用の能力をアップさせたということにはつながらないのである。
と述べたように、この新指標を利用される方は、質問紙尺度の成り立ちについて、また、指標が誤解されたままで一人歩きしないように、しっかりと理解しておく必要があるように思う。

 次回に続く。