じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 昨日に続いて、秋の雲の写真。岡山では8月26日以降、涼しい朝が続いており、最低気温は、26日は21.9℃、27日は21.5℃、28日は22.5℃というように、3日連続で21℃〜22℃台まで下がった。

 写真は、8月28日早朝の理学部前。


2013年08月27日(火)

【思ったこと】
130827(火)高齢者における選択のパラドックス〜「選択の技術」は高齢者にも通用するか?(5)受講生による「幸せ」の定義

 8月26日も述べたように、

 アイエンガー先生の「コロンビア白熱教室」の最終回、

第5回 「幸福になるための技術」

では、受講生から幸せの定義についていろいろな意見を求めたあと、けっきょく、決め手となる定義は無いということから、「幸せになるための選択を惑わす障害」が論じられた。ここでもう一度、受講生によって挙げられた定義を書き出してみることにしたい。なお、→以下は、学生が発言したあとの、アイエンガー先生によるショートコメント。
  1. 基本的なニーズが満たされていること。加えて、不満に思うようなことが無いこと。→快適だったらそれでいいのか?
  2. 他を思い煩わず、自分の状態に満足していること。→平和で満ち足りていて、足りないモノは何もなく、何も欲しいと思わない状態。
  3. 快適さは重要であり、ストレスを感じない、何も心配の無い状態であること。→試験が無ければ幸せ。理想のホテルに招待したら満足か? 自由と引き替えになると望まない?
  4. 人生はいいことと、悪いことがあったほうがいい。いいことの多いほうがいい。
  5. 自分が人間として成長したのを感じた時、つまり、以前より進歩した時、よりよい自分になれた時→つまり、成長できること。
  6. 自己調節的なもの。自分自身の内的世界と外的現実とをある程度までコントロールし、それを認識することが大事。外的な事実に振り回されないこと。→自分の環境をコントロールし、影響を及ぼし、自分で決定すること
  7. 目的意識。自分が求めるものを探している時。たとえまだ手に入っていなくても、自分の向かう先を知っていれば幸せ→なんであれ、人生に目的を持つこと。

 このうち1.から5.のあたりは、マズローの自己実現理論に酷似しているようにも見える。もっとも、アイエンガー先生の5回シリーズの講義は、コロンビア大学での正式な授業ではなく、どうやら、NHKで放送するためにボランティアの学生を集めて特別に開講されたように見受けられる。であるからして、学生の発言も、ある程度シナリオどおりになされたのかもしれないし、本筋に関係の無い部分がカットされた可能性も無いとは言えない。なお、上記6.に関連してコメントされた「自分の環境をコントロールし、影響を及ぼし、自分で決定すること」というのは、オペラント行動がうまく強化されている状態と一致するものであり、スキナーの幸福の定義:
Happiness does not lie in the possession of positive reinforcers; it lies in behaving because positive reinforcers have then followed.
幸福とは、好子(コウシ)を手にしていることではなく、それが結果としてもたらされたがゆえに行動することである。
にかなり違い。また、最後の6.も、好子を手にするという結果ではなく、最終的な好子(目的)に向かって日々努力を重ねること自体が強化されている状態を示すという点で、行動分析的な考えに共通しているとも言えよう。

 いっぽう、アイエンガー先生御自身の考え方は、講義の冒頭のところですでに示されていた。
  1. 第5回の英語テーマは「The art of happiness choosing better every day」
  2. 「どうすればもっと意味深い人生(profound life)を送るのに役立つ選択をできるようになるか」が「どうすれば幸せになれるのか?」
  3. 真実の自分(インナーコア)を掘り起こすこと。自分が何者であるかを見出し、何者であるかを前提に自分の人生がいかなるものであるかを知ること。これを掘り起こす道具が選択。
  4. 人生とはすべての選択が積み重なったもの(カミュ)
これらの哲学的命題に比べると、受講生による「幸せの定義」はもう少し率直であり、選択とはあまり関係していないようにも思えた。あと、受講生からは「世のため、人のために尽くすこと」といった発言は無く、個人重視の姿勢がうかがえた。


 次回に続く。