じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 JR岐阜駅前の広場。ここは昨年10月にも訪れたことがあり、金ピカの織田信長像にも前回ほどの違和感はなかった。

 なお、岡大敷地内喫煙ゼロをめざす安全衛生委員活動日誌を執筆している関係で、最近はどこへいっても、禁煙区域の実施状況や違反喫煙行為、吸い殻ポイ捨てに関心が向いてしまう。このJR岐阜駅付近は、写真右上にあるように「路上喫煙禁止区域違反すると2000円」に指定されているとのことであったが、27日(土)の花火大会開始前に、広場を見下ろせる2階のテラスで、男性1名が赤ちゃんをベビーカーに乗せたままタバコを吸っているのを目撃した。つい、注意申し上げようかと思ったが、岡大構内ではないし、万が一逆上されるとこちらの予定にも差し障りが出てくるので、見過ごした。それにしても、子育てをしている父親が、赤ちゃんのすぐそばで喫煙するとは、将来が思いやられる。


2013年07月29日(月)

【思ったこと】
130729(月)日本行動分析学会第31回大会(3)健康行動への行動経済学からのアプローチ(1)

 今回は、7月27日(土)午前に行われた、

27日午前の学会企画シンポ:「健康行動への行動経済学からのアプローチ」

について、メモ・感想を述べさせていただくことにしたい。ちなみに、このシンポは朝9時半開始であったため、名古屋・栄に宿泊していた私は朝8時にホテルを出て岐阜に向かった。ところがあいにく、人身事故の影響でJR線が不通となっており、名鉄名古屋駅への移動などで時間をとられ、開始時刻より15分ほど遅刻してしまった。そのため、企画趣旨説明と最初の話題提供の一部を拝聴することができなかった。土曜日のうちに岐阜に移動しておけばこういうことは無かったのだが、金曜日には21時頃まで記念シンポ関係者の懇親会があったため、やむなくシンポ会場近くのホテルに宿泊していた次第である。

 さて、大会プログラムによれば、この企画は、2000年に刊行された『Reframing health behavior change with behavioral economics.』の13年後の現況を基礎の若手にレビューしてもらい、これに基礎と応用(臨床)の若手を指定討論者として議論し、行動経済学的接近法への理解を深めるというような趣旨であった。話題提供は、以下の3件であった。
  1. 行動経済学の基礎概念と研究法:需要分析、価格弾力性、代替性、補完性など(健康行動の研究データを用いて基礎概念を概説) 恒松伸(立命館大)
  2. 異時点間選択としての健康行動:自己制御、価値割引など(価値割引の観点から健康行動を扱った研究の概説) 川嶋 健太郎(尚絅大学短期大学部)
  3. 喫煙・飲酒・薬物摂取・ギャンブルの行動経済学:依存症、他行動強化法、代替性と補完性の観点からの介入法など  蒲生 裕司(医療法人社団天紀会 こころのホスピタル町田)

 上記の事情により、最初の話題提供は途中から拝聴することになったが、その中では、ニコチン依存に関して、実験室研究と質問紙研究の比較がなされていた。

 2番目の話題提供では、「行動経済学からみた“健康”」、価値割引とセルフコントロールなどが論じられた。「健康に悪いことをして、健康によいことができないのはなぜか?」に関して行動分析学的な発想から考察された。健康行動モデルとしては、「保健信念モデル」や「トランスセオレティカルモデル」が紹介された。

 行動経済学の観点から言えば、「健康」も1つの商品であり、医療への需要は正常財であること。「健康」はそれ自体が好子というよりも、健康であることでさまざまな好子にアクセスできる(不健康であると、治療にお金がかかったり、時間がとられたりするためアクセスできない)というところにあるという指摘があり、これは同感。じっさい、私なども、別段、平均寿命以上に長生きしたいとは思わないが、山登りや旅行、園芸作業などの楽しみを維持するために、健康に注意を払っている。また、治療や延命(←ここでは、延命治療の意味ではなく、寿命が何年延びるかというような話)の価値と、お金や一般商品の価値との等価点をさぐる研究なども紹介された。もっとも、上記の指摘にもあるように、「健康」自体の大きさというのはなかなか評価できないものであるし、延命の年数というのも、若い時に考える長さと、実際に歳をとってからの長さでは評価が変わる可能性はあるように思えた。

 このあと遅延価値割引の理論に基づき、例えば「今日から10カ月病気になるのと、25年後に12カ月病気になるのとどちらがよいか?」といった課題、あるいはそのさいに影響を及ぼす可能性のある「サイン効果」、「報酬量効果」、「領域効果」などが紹介された。

 ここまでの部分については、きわめて抽象的で数量化しにくい「健康」、「病気」、「延命」などを、お金や商品の価値との等価点や遅延割引でどこまで測れるのかという疑問が残った。フロアから発言の機会があった時にも述べさせていただいたが、遅延価値割引の理論が現実にマッチした応用性を持つのは、おそらく、健康食品の値段とか、保険の金額と補償内容に関する選択といった領域ではないかと思われる。

次回に続く。