じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 一般教育棟構内(津島東キャンパス)南東端にあった「岡大七不思議の1つ「謎の橋」と水の流れていない「謎の川」が消滅したことを3月3日の日記に記したところであったが、その後さらに工事が進み、「謎の川」は掘り起こされて、どうやら、コンクリート製の排水ブロックが埋設される模様。



2013年03月7日(木)

【思ったこと】
130307(木)第18回人間行動分析研究会(4)遅延耐性か固執性か(1)

 3月6日の続き。3番目は、

d-amphetamineとmethylphenidateによる遅延割引関数の変化:遅延耐性か固執性か?

という話題提供であった。この発表のいちばんのポイントは、d-amphetamineなどのdopamine作動薬が本当に遅延耐性(←じっくり待って後からたくさん貰う)を高めるのか、それとも本当は固執性を高めるているだけであってこれまでの薬物効果の確認方法に問題があったのかを検証しようとするものであり、学界で認められればかなりの反響を呼ぶ可能性があるように思われた。

 リンク先にもあるように、この種の効果確認では、直後に呈示される少量の報酬(SS報酬)と遅延後に呈示される多量の報酬(LL報酬)の間の選択において、後者の遅延時間をセッション内で段階的に長くする手続き(=累積遅延法と呼ばれる極限法の上昇系列のみのテスト)が用いられてきた。しかしこの手続きでは、(1)遅延耐性が変化した、(2)はじめに形成されるLL報酬への選好が固執した、の2種類の行動メカニズムが分離できていないという問題があった。

 私が理解できた範囲でこれを分かりやすく説明すると以下のようになる。まずここでは、あくまで仮想のデッカイ話として、ゾウが被験動物であったとする。ゾウが鼻先で左のドアを叩くと5個のリンゴが貰える。いっぽう右のドアを叩くと、1分待ってから 10個のリンゴが貰える。ゾウは1分待ちの比較では右側の10個のほうを選ぶかもしれないが、待ち時間を2分、3分と少しずつ増やしていくと(=上昇系列)、いずれは、我慢するのを止めて左側の5個のほうを選ぶかもしれない。これが、dopamine作動薬によってどう変わるのかを調べるというのがこの種の実験である。しかし、この薬によって、遅延時間が延びてもなお右側を選び続ける傾向が高まったとしても、それが辛抱強く待つという傾向が高まったためなのか、それとも、同じ右側を選び続けるという固執性が高まったのかは判別できない。よって、厳密に検証するには、左側を選ぶという長大な遅延時間からスタートして、少しずつ遅延時間を短くしていって、どのくらい短くすれば右側にチェンジするかという下降系列でもテストしなければならない。しかし、伝統的な効果確認方法では、上昇系列でしかチェックされていなかったという問題があった。

次回に続く。