じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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スパシ峠〜カラクリ湖

2000.8.10.〜8.11.


8月29日(火)

【思ったこと(2)】
_00829(火)[_008PC]生涯で最高の景色

 昨日の続きとして、標高4000mのスパシ峠と、カラクリ湖滞在中に思ったことを記したいと思う。この時の主な写真はすでに、こちらにアップしてある。

 カラクリ湖は今回の旅行の中でも私が最も期待していたポイントであった。この湖は標高3600mの高さにある広さ10平方kmほどの湖。ムスターグ・アタ(7546m)と、コングール(7719m)という7000メートル級の2つの山に囲まれ、湖面にそれらの姿を映し出すことで知られている。カラコルムハイウェイを1週間近く走行しやっとたどり着いたこと、日本出国時点では洪水のため道路が不通になっており修復事情によっては到達できない恐れも大きかったこと、完ぺきに晴れ上がったことなどもあって、感激はひとしおであった。

 日本で募集されているツアーの中には、クンジェラブ峠越えはせずに、カシュガルからの日帰り小旅行としてカラクリ湖まで往復するツアーもあるようだ。しかし、こんなに素晴らしい景色を1〜2時間程度眺めただけで戻ってしまうのは山好きの人間にとってはまことに勿体ない。今回私が参加したツアーは湖岸のパオに宿泊するものであった。そのおかげで、昼間の景色はもちろん、夕日に赤く染まる姿、澄み切った夜空、そしてコングールの間から突き刺すように差し込んでくる朝日、これらをほぼ快晴の天候のもとで眺められたのはまことにラッキーであった。

 カラクリ湖は、タシクルガンからは車で約2時間のところにある。この区間の標高はおおむね3000〜3500mとなっているが、到着の30分前に標高4000mのスパシ峠という所を越える。ここからの眺め(写真1〜4)も抜群であった。これらの写真にも写っているように、「ムスターグ・アタ7546m」とか「コングール7719m」というのは単独のピークの名前ではなく、ひとまとまりの山脈もしくは山群全体を呼ぶものであるようだ。日本で言えば、穂高や槍ヶ岳をひっくるめて1つの山名で呼んでいるようなもの。それだけに、眺める角度によって見え方は相当に変化する。スパシ峠からのムスターグ・アタは山体が2つに割れており、その間を含めて大きな氷河が4つほどせり出していた。ちなみにカラクリ湖から眺めるムスターグ・アタは、スパシ峠からの写真の左側面となっており、そちらからは氷河を見ることはできなかった。

 カラクリ湖畔に到着したのは北京時間で14時頃、実質的には午前11時頃に相当している。湖岸に歩いていくと少年たちが群がってきて「ウマノル?」という。近くには観光用の馬やラクダが繋がれていた。現地の人々にとっては相当の収入源になっているのだろう。このほか別の少年が手のひらに紫や黄色、ピンク色の宝石?を乗せて「チェンジ、チェンジ」という。時間が無くて交渉には至らなかったが、おそらく、一着170円で買ってきた下着兼用のTシャツ、100円均一ショップで買った懐中電灯なども交換の対象になったかと思う。あまり粗悪なものを交換すると日本人全体の信用を失うことになりかねないけれども.....。

 昼食後から夕食までの5時間は完全にフリーとなったので、私は一人で湖畔を左回りに散策することにした。写真5〜10はその時撮影したものであり、結果的にツアー参加者のうち私だけのオリジナルのアングルからの作品ということになった。

 湖畔を巡った目的の1つは、ムスターグ・アタやコングールが水面に映し出された写真を撮ることにあった。この日はけっこう風が強く、カラクリ湖本体の湖面には波が立っていて山の陰が写らない。そこで湖岸近くの湿地帯の沼から撮影したのが写真の6と9であった。湿地帯の中には写真7のような、かろうじて飛び越えられるぐらいの幅の小川もあったが、全般的には砂地で地盤がしっかりしており歩くのに不自由はなかった。

 湿原帯では、写真5のような桜草(プリムラ?)の仲間と思われる花の群落のほか、小型のタンポポなど10種類程度の花が見られた。いずれ「印象に残った花」のコーナーに写真をアップしたいと思う。タンポポがここに生えていた理由は不明。

 湖に生息する魚は栄養不足のためせいぜい体長10cmにしかならないと聞いた。写真7のような小川で実際に私が見たのはメダカ程度の大きさ。湖岸の浅瀬には5〜6羽の水鳥が羽を休めていたが、これでは餌をとるのに苦労するだろう。このほか湖岸の草地では5〜10mm程度の小さなバッタが鳴いていた。テントウムシの仲間も1匹。また湖岸の波打ち際にはカワニナのような形をした白い貝殻がたくさん落ちていた。ビニール袋に入れて持ち帰ろうとしたが、貝殻がひじょうに薄く、帰国した時には大部分が粉々にくだけてしまった。

 夕食後の21時半すぎ(北京時間、実質18時半頃)からはムスターグ・アタやコングールが日の入りとともに変化していく様子をくっきりと捉えることができた(写真11〜18)。この日は月齢10.5であり、夜半までは月に照らされたムスターグ・アタが神秘的に光り、さらに月没後は満点の星。何度か外を眺めてみたが、ぎょしゃ座の五角形の中に20個以上の星を眺められるほどの透明度。また、流れ星を3個目撃することができた。

 翌8/11もほぼ快晴。太陽はコングールの後ろ側にしばらくとどまり、十分明るさを増してから突き刺すように湖面に差し込んできた(写真19)。前日の風も止んで、なめらかになった湖面にはムスターグ・アタの雄姿がくっきりと映し出されていた(写真20)。