じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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2012年版・岡山大学構内の紅葉(22)まだまだ頑張る「落ちないフウ」

 岡大七不思議(←長谷川が勝手に選定)の1つ、「落ちないフウ」(アメリカフウ、モミジバフウ)がまだまだ葉をつけている。過去12年間の記録が12月6日の日記にあり。


2012年12月16日(日)

【思ったこと】
_c1216(日)“叱りゼロ”社会はなぜ実現できないのか?(4)好子消失阻止の随伴性の特徴(1)

 12月14日の日記で、「叱り」の4つのタイプについて述べた。この4つのうち、後半の2つについてはもう少し補足させていただく。
  • 嫌子出現阻止による強化:望ましい行動が生じなかった時に嫌子を与えることで、将来の嫌子出現を回避するような行動を増やそうとする(宿題をしなかったことを罰することで、罰を回避するための勉強行動が強化される)。
  • 好子消失阻止による強化:望ましい行動が生じなかった時に好子を剥奪することで、将来の好子剥奪を回避するような行動を増やそうとする(宿題をしないとお小遣いを与えない、勉強をしなかった日はテレビを禁止するなど)。
 これらは、一口で言えば、「勉強しない」、「宿題をやらない」というように、「○○しない」という状態に対して与えられる「叱り」である。行動分析学では「○○しない」というのは死人テスト(=「死んだ人でもできることは行動ではない」という基準)をパスしないので行動とは見なされない。にも関わらず、こうした「叱り」に効果があるように見えるのは、結果として「嫌子出現阻止の随伴性」や「好子消失阻止の随伴性」が働いているためである。勉強しなければやがて嫌子(尻叩き)が出現、あるいは、好子が消失(お小遣い没収)するという状況に置かれると、それらを阻止するための行動が強化されるようになる。

 このうち、嫌子出現阻止による強化は、倫理的な問題(体罰はよくないという考え方)や情動面での悪影響に配慮してあまり推奨されていない。いっぽう、好子消失阻止の随伴性は、日常社会のさまざまな行動を実質的に強化していると言える。学校の勉強なども、勉強そのものが楽しくてたまらないというなら「好子出現の随伴性」で強化されているというが、受験勉強ともなると、「ちゃんと勉強しなければ大学に合格できない」という好子消失阻止の随伴性(勉強を続けていれば好子(大学合格)が保証されるが、勉強をサボるとそれが失われる)で義務的に強化される可能性がある。これは、産業労働の本質にも関わることであって、スキナーが1979年来日時の講演:

Non-punitive Society

で、
Industrial incentives are really punitive, We think of a weekly wage as a kind of reward, but it does not work that way. II establishes a standard of living from which a worker can be cut off by being discharged, workers do not work on Monday morning because of the pay they will receive at the end of the week; they work because a supervisor will discharge them if they do not. Under most incentive systems, workers do not work for things but to avoid loosing them.
と述べているのは、まさにこのことである。多くの労働者は、賃金という好子出現の随伴性によって強化されているように見えるが、実際は、解雇(好子消失)を阻止するために働き続けているのである。

次回に続く。