じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 千葉県・ユーカリが丘で高齢者ケア関連の会合があった。ここは、不動産会社である「山万」が開発したニュータウンであり、同一世代が大量に移住して街全体の高齢化・空洞化を招かないように、開発のペースを調整し、かつ、高齢者から子ども世代までが安心して暮らせるよう、いろいろな配慮がなされていると聞いた。(『三位一体のまちづくり』を併せて参照。)

 駅の北側には山万ユーカリが丘線という、全国では珍しい純民間企業経営の新交通システムがある。ウィキペディアの当該項目にも記されているように、この交通システムは、
ユーカリが丘 - 公園の区間は両方向に運転される単線、公園 - 女子大 - 公園の区間は片方向にのみ運転される環状線になっており、ユーカリが丘駅を出発した列車は公園駅から環状線を反時計回りに環状運転して、同駅から再びユーカリが丘駅に戻る。
というテニスのラケットの外周型の路線になっている。写真上は、その分岐となる「公園駅」。また、テニスラケット内側にあたる部分には、昔からの集落が残っており、宅地開発は原則としてその外側に限られていると聞いた。写真下の2枚は内側の農村地帯。ユーカリが丘線の高架の外側には造成された住宅地やマンションが並んでおり、対照的な風景になっていた。


11月19日(月)

【思ったこと】
_c1119(月)脳のはたらきからみた幸せのかたち(1)

 千葉県・ユーカリが丘で行われた高齢者ケア関連の会合の一環として、K先生による表記の講演が行われた。K先生は脳科学の第一線の研究者として知られている。エセ脳科学者たちが横行するなか、ホンモノの脳科学の一端を教えていただくことができて大変参考になった。記憶の減衰しないうちに、参考になったことをメモしておく。なお、以下はすべて、長谷川のメモや聞き取りに基づくものであり、理解不足や誤解もありうる。利用される場合は、必ず専門書等で再確認をしていただきたい。

 講演ではまず、いくつかの基礎知識として
  1. 脳にシワがあるのは表面積を増やすため。母親の骨盤の関係で、脳の大きさをこれ以上大きくすることは不可能。そんな中での進化上の発展形としてシワが増えた。但し、イルカが人より表面積が大きい理由は不明。
  2. 脳は瞬時に書き換えられている。
  3. 我々が受け取る情報の量は脳の処理能力を超えている。1つのニューロンには数万個の入力があるが、閾値を超えた段階で次に伝達される。
  4. 幸せの根本は、脳が喜んだか悲しんだかによって決まる。
  5. 欲求の質は、年齢によって変わってくるのではないか。このことについて脳科学からも論じることができる。
といった話題が概括された。

 次に、高齢者ケアと関係の深いアルツハイマー型認知症について。

 まず、家族が気づいた認知症の初期症状としては、「同じことを言ったり聞いたり」、「名前が思い出せない」、「忘れ物、しまい忘れ」、「関心や興味の消失」などが代表的であるが、これらは、まさに私自身を含めて、加齢とともに誰にでも出てくる症状である。但し、「財布を盗まれたと言う」という「モノ盗られ妄想」は、認知症特有であるらしい。このほか、五角形が重なった図形を描き写せるかというテストも、自分でできる超早期発見には有効であるようだ。

 さて、アルツハーマー型認知症の原因であるが、PETによるアミロイドイメージング(アミロイドβペプチド)をmeasurementしてみると、認知症が発症したり頭頂葉、側頭葉、後頭葉の萎縮が始まる数年前から、アミロイドβペプチドの蓄積が始まっており、これを溶かせばよいというあたりまでは研究が進んでいるという。但し、それが治療や予防に適用されるのは、どうやら20年後ぐらいらしく、少なくとも私自身がその恩恵にあずかることはなさそうである。また、アルツハイマー型と診断された方の中には、アミロイドβペプチドの蓄積が見られないタイプもあるという。

 このほか、前頭側頭葉変性症によるピック病がある。ウィキペディアに記されているように、前頭葉は「現在の行動によって生じる未来における結果の認知や、より良い行動の選択、許容され難い社会的応答の無効化と抑圧、物事の類似点や相違点の判断に関する能力と関係している。」。よって、その部分が変性することで、当該項目にあるように、
人格が急変することが挙げられる。例えば万引きや人前での破廉恥行為など、本来なら実行に罪悪感や羞恥心を示す行動を何ら気に掛けず平気に行うようになったり、物事に無頼で無頓着になり、人から注意を受けても耳を傾けることもなくなるなど、いわゆる「自分勝手・我儘」と表現される状態になる。何を訪ねても【尋ねても】深く考えず、悩む様子も見られない。
といった特徴が出てくる。このように、認知症のいろいろなタイプを脳と関連づけて理解することで、そのことをふまえた有効な高齢者ケアを行うことができるようになる。

次回に続く。