じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡大・文法経1号館では、今年の3月に竣工した第一期分に続いて、10月から東側半分の第二期耐震改修工事が始まった。10月5日朝には、表玄関や北側出入口(講義棟との連絡通路)が閉鎖された。これにより工事竣工までは、西側口と階段のみが出入り可能となり、東側エリアに含まれている唯一のエレベーターは使用できなくなった。車いす利用者や高齢教員に対する特段の配慮はなされていないため、期間中、学生・教職員は全員、階段を使わなければならない。また、雨の日であっても、講義棟や事務室のある他の棟へは西側出入口から外に出て移動しなければならない。

10月5日(金)

【思ったこと】
_c1005(金)日本心理学会・第76回大会(17)高齢者の次世代に対する利他的行動(7)感謝メッセージの効果

 昨日の続き。

 (高齢者から支援を受ける)若い世代からのフィードバックの効果について、もう1つの検討が行われた。それは、毎月、生涯学習センターで子育て支援を行っている高齢者に対して、「ひとこと感想」という形でポジティブなメッセージの書かれたカードを支援を受けている若い母親から贈るという「実験」であった。カードに記されたメッセージには「とても楽しかったです」といった感想や「ありがとうございました」といった感謝の言葉が含まれていた。さらに、ディスカッションの時間を設けて、それらを受け取った高齢者たちがどのような受け止めをしたのかを書き取った。これらの介入を1年間続けたところ、高齢者が1年間を通じて支援活動を継続した比率(定着率)は過去最高の90数%となり、それまでの定着率の55%から90%を上回った。また、月別にみても、月別の参加比率はほぼ80%から100%と高率であり、その変動のグラフは、介入を行う前の年度の約70%から100%のあいだの変動グラフをほぼ全体を通して上回っていたという。

 こうした実験は、まさに行動分析学で言うところの付加的強化の介入実験と言える。但し、AB型(前年度をベースライン条件とし、実施した年度を実験条件とする)という比較しか行っていないため、本当に介入の効果があったのかどうかはイマイチ説得力に欠けていた。実験的に検証するのであれば、同じ施設において、再度、メッセージカードを贈らないという条件(これによりABA型になる)を導入するか、あるいは、別の複数の施設において、導入時期をずらして介入をおこない、介入以後の比率に変化があったのかどうかを確認しないと、科学的な検証にはならないように思えた。

 また、これはフロアからの質問の際にも発言させていただいたことであるが、介入実施以前の前年度までであっても、定着率は55%〜90%のレベルは維持しており、それらが何によって強化されているのかは別途検証する必要があるように思った。おそらく、子どもたちの笑顔や発達が自然に随伴する好子になっているのではないかと思われるが...。

次回に続く。