じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 吸い殻ポイ捨ての現状。

 5月31日は世界禁煙デー、また日本では5月31日から6月6日までの1週間が禁煙週間となっているという。自室に籠もってスパスパとタバコを吸い、その結果として肺がんや脳梗塞などで苦しんだとしても、それは自己責任で自業自得であろうが、大学構内で他者に煙がかかるような喫煙をすることは傷害行為であって絶対に許すことはできない。加えて、路上への吸い殻ポイ捨ては、環境を汚染し、時には火災の原因にもなる。これを機会に、大学構内で路上喫煙やポイ捨て行為を目撃した時は、相手が誰であっても大声で怒鳴りつけ、こうした犯罪行為を直ちに阻止しようと思っている。

 写真上は文学部西出口付近、写真下は一般教育棟構内のベンチ付近。赤い円内が吸い殻。

5月30日(水)

【思ったこと】
_c0530(水)認知症高齢者のQOLと実態(3)できる範囲のちょっとした工夫

 昨日に続いて、印象に残った事例報告をメモしておきたい。今回は、できる範囲のちょっとした工夫について。

 まず、利用者への水分補給時に、カラーコップを用意して、好みの色を選んでいただくという取り組みがあった。それまでは、同じ色のコップで機械的に配布していたのに対して、お一人お一人に「どの色がいいですか」と尋ね、また、選んだ色について「○○色は幸せの色ですね」といった声かけをするというものである。中味は同じだが、コップの色を複数にするというちょっとした工夫によって、選択の機会が与えられ、かつ、会話の場がつくることができたという点で大いに評価できる。ちなみに、望月(2001)が提唱した「行動的QOL」では、
  • 第一のレベル:ある個人において、「正の強化を受ける行動」を成立させる段階。選択はできないが、正の強化で維持される行動が個人に準備されているもの。
  • 第二のレベル:正の強化を受ける行動選択肢が存在し対象者が選択できる段階。個人にいくつかの選択肢が準備され、それぞれの選択ができるもの。
  • 第三のレベル:拡大する選択肢の内容決定に本人が関与できる。個人が既存の選択肢を拒否して新しい選択肢を要求できる。あるいは、特定対象は指定しないが、新たな欲求を探索するような行動を許容する選択事態。
という3つのレベルが提唱されており、カラーコップの選択というのは、第二のレベルの保障の第一歩となる。その上でできることなら(←スタッフやコスト面でいろいろ制約はあるとは思うが)、コップの色だけでなくて、飲み物自体(水、お茶、紅茶、コーヒーなど)の選択の機会も保障し、かつ、第三のレベルとして提唱されているような、飲み物を拒否したり、新たな飲み物についての提案ができるような機会も確保することがさらに求められるように思う。

 2番目は、介護つき有料老人ホームにおける、にんじんケーキづくりの取り組みである。ここでは単に、もの作り作業ということでなく、五感(目で見ることの視覚、BGMによる聴覚、ケーキについての味覚、香りに関する嗅覚、作業過程での触覚)が刺激されるようにいろいろ配慮されていた点が大いに評価できる。

 3番目は、在宅介護において、利用者のできることを最大限に実現させる取り組みである。この87歳の女性の場合は、転倒がきっかけで家族から外出や家事を禁止され、長時間何も行うこともなく時間をもてあましていたという。そのことにより、老いに対するあきらめ、自己嫌悪、子どもたちへ迷惑をかけているといった思いが強かったが、家族に理解を求めつつ、難しい作業はヘルパーに任せて、本人ができるような家事や洗濯等の行動機会を確保していくことができたという。日常生活の雑事というのは、決して高齢者に負担を課すというようなものではなく、生きていく上での基本的な行動であり、「能動的に参加して強化される」ことの第一歩である。本人が嫌がっているならともかく、本人が望んでいるのにそれを禁止するというのは重大な権利侵害にあたる。いろいろなリスクは最小限に抑えるとして、「行動して強化される権利」について、ご家族にも理解を求めていくことが必要であろう。


次回に続く。