じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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文学部の耐震改修工事一期分(西側部分)の工事が完了し、3月27日から改修後の室内に入れるようになった。今回の工事に伴い、私の研究室は2階から3階に移転することになっているが、一番の関心事は、もと居た2階の部屋がどのように変わっているのかということであった。上がその写真、下は工事直前に撮った同じ部屋の写真。なお、この部屋は4月以降は歴史文化専修コースの先生が使用することになっている。

3月27日(火)

【思ったこと】
_c0327(火)第17回人間行動分析研究会(3)行動的コーチング(3)心理的競技能力/パフォーマンスとスキル

 昨日の続き。

 話題提供の前半では、これまでの行動的コーチングがもっぱらスキルに注目してきたのに対して、日本の伝統的なスポーツ教育では「心・技・体」の能力が必要であると言われてきており、それらの面にも着目する必要があるのではないかという話題が取り上げられた。こうした「精神力」は、心理学としての科学的研究では「心理的競技能力」と呼ばれており、(徳永, 2001)、DIPCAという心理的競技能力診断検査が開発されているという。そのDIPCAは以下の5因子12尺度から構成されている。
  • 競技意欲
    • 忍耐力
    • 闘争心
    • 自己実現意欲
    • 勝利意欲
  • 精神の安定・集中
    • 自己コントロール能力
    • リラックス能力
    • 集中力
  • 自信
    • 自信
  • 決断力
    • 作戦能力
      • 予測力
      • 判断力
    • 協調性
      • 協調性
     また、この心理的競技能力の大きさには、競技成績や競技レベルや大会参加回数、経験年数などが関係しており、優れた選手ほど競技能力が高いということであった。

     今回の話題提供前半では、こうした心理的競技能力が、アーチェリー競技におけるスキル(フォームなど)やパフォーマンス(タイムなど)とどう関係しているのか、検討結果が報告された。この話題提供前半でイマイチ分からなかったのは、パフォーマンスとスキルの区別である。操作的にはパフォーマンスはスコアで評価され、スキルはスキル得点で評価されたとなっている。おそらく、スコアというのは的に当てた時に得られる得点(0〜360点)のことであり、スキル得点というのは、観察者がビデオ撮影してフォームを課題分析した結果によって評価された得点であるようだった。また心理的競技能力は、別に実施したDIPCA48項目(嘘尺度4項目を含む)のスコアであった。

     検討の結果、パフォーマンスとスキルの得点には有意な相関があったが、心理的競技能力とそれ以外の間の相関は有意ではなかったという。

     以上までの部分について若干のコメント・感想を述べさせていただくが、DIPCAの質問項目例を拝見した限りでは、「心理的競技能力」というのは、かなり多種多様な「精神力」を自己評定させており、その中には、試合直前の緊張や闘争心に関わる項目もあるほか、アーチェリー競技そのものにはあまり関係なさそうな「作戦能力」や「チームワーク」なども含まれており、素朴にみて、総合的なスコアの高低が直ちにパフォーマンスやスキルに影響を及ぼすとは言い難い面があるように思えた。また、仮に自己評定ではなく、監督やコーチが「心理的競技能力」を評価した場合、競技成績の悪い選手に対しては、「この選手は試合前に緊張している」とか「闘争心が足りない」といった固定的な解釈が先行し、その先入観に基づいて評価してしまう(よって、パフォーマンスやスキルと独立しない)恐れもあるように思えた。

     次回に続く。