じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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農学部農場の温室解体完了。

 1月8日頃から始まった農学部農場の温室の解体工事がほぼ完了した。今回解体された温室ではブドウが栽培されていたが、今後どのような設備ができるのかは不明。

 ちなみに、このエリアでは、季節によって温室のガラス面に夕日が反射して「偽太陽」が出現していた。(今回より西側にある温室に出現した偽太陽の写真が下段にあり。また、2011年10月20日の日記に温室を含む3箇所の偽太陽の写真あり。)

1月20日(金)

【思ったこと】
_c0120(金)上野千鶴子特別招聘教授着任記念学術講演・シンポジウム(12)協セクターとは何か?

 昨日の日記にも記したように、上野氏は「福祉国家」に代えて「福祉社会」、「福祉多元社会」という概念を提唱しておられた。「福祉国家」と「福祉社会」の違いについては『ケアの社会学』の218頁に説明されており、要するに、「社会」が「国家」以外の多様なアクターを含んでいる点にあるという。そしてのそのアクターを4つの領域(セクター)に分けて考えるのが「福祉多元社会論」の基本であると理解した。すなわち、
  1. 官セクター(国家)
  2. 民セクター(市場)
  3. 協セクター(市民社会)
  4. 私セクター(家族)
である。ちなみに「官」を「公」と呼ぶこともできるが、上野氏は、「官」を「公」と呼んでしまうと「官」にからむ利権が見えにくくなるというような理由(←あくまで長谷川の聞き取りによる)で、どうしても「公」とは呼べなかったと語っておられた。(『ケアの社会学』の219頁では「公共性を「官」が独占することへの批評意識がこめられているだけでなく、これまでの官が公益ではなく文字通りの「官益」を追求してきたことへの批判も含まれている。」と説明されていた。)

 それはそれとして、「協セクター」という言葉は、恥ずかしながら、私自身にとっては、今回の講演で初めて耳にした言葉であり、当初は何のことかさっぱり分からなかった。しかし、これを正しく理解しないと、『ケアの社会学』の主張の根幹にふれることはできそうにもない。

 御著書の『ケアの社会学』の219頁のあたりから、協セクターの定義・特徴を抜き出してみると、
  • 「協セクター」は「市民社会」とも「共同セクター」とも呼ばれてきた。
  • 今日の「協セクター」はかつてのコモン(入会地)のような共同体的な基盤を必ずしも持たないし、それがのぞましいともいえない。
となる。御著書の『ケアの社会学』のほうでは220頁以降に、「自助」と「家族介護」の区別、「第三のセクター」に登場するNPO法人についての議論が展開されるが、今回の講演は時間がきわめて限られていたせいか、それらについての細かい言及は無かった。よって、この本質にかかわる部分については、今回の連載ではコメントを差し控えたいと思う。

 次回に続く。