じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 定点観察対象のハクモクレン。そろそろ花芽がついていると思って久しぶりに見に行ったところ、スズメバチの巣がぶら下がっていてビックリ。葉っぱがついていた時期は気づかなかったが、こんなところにあったとは...?

1月9日(月)

【思ったこと】
_c0109(月)上野千鶴子特別招聘教授着任記念学術講演・シンポジウム(3)エビデンス論議/記述的であるとともに規範的

 昨日の続き。さて、すでに述べたように、今回の講演内容は、、

ケアの社会学――当事者主権の福祉社会へ(太田出版、2011年8月刊)

に基づくものである。この御著書はこの講演・シンポの参加申し込みをした直後に注文しておいたのだが、残念ながら、到着が遅れ、ご講演前には拝読することができなかった。また、この日記執筆時点ではすでに手元にあるのだが、まだまだ読めていない。ということで、御著書自体についての意見・感想はまた別の機会に述べさせていただくこととし、この連載では、ご講演で語られた内容だけに限って、主として、感想やそこから思いついたことだけを記していくことにしたい。

 さて、講演の初めのところで上野氏は、この御著書は決して上野氏個人のアイデアや思いつきを並べたものではなく、先行研究の積み重ねの上でモノを言うものであると強調された。また、エビデンスに基づいて証明していく経験科学であると述べられた。もっとも、例えば「協セクター」に関しては、この程度では証明とは言えない、上野氏の協セクターに対する片想いにすぎないという批判もあるという。また、私自身、社会学、というか、社会学一般ではなくて上野氏の社会学において、どういうことを明らかにすればエビデンスと言えるのかがまだ理解できていない。少なくとも心理学においては、ある主張や予測に合致するような事例を見つけたとしてもそれだけではエビデンスとは言えず、場合によっては、単に、自分に都合の良い事例を探してきただけだと批判されることもある。とはいえ、平均値の有意差や、多数派の特徴を述べても一般化できるとは必ずしも言えない。近々、同僚の社会学の先生方に尋ねてみたいとは思っている。

 ケアとは何かに関しては、「相互行為としてのケア」が強調された。ケアは、介護者と要介護者から構成され、複数の当事者の「あいだ」でおきる行為であり、その時その場で生産され消費される労働である。社会学はinterpersonal approachを重視し、記述的であるとともに規範的(御著書によれば、ケアの社会学は必然的に規範的アプローチを含まざるを得ない)、そしてエビデンスに基づく経験科学であるというご趣旨であった。生産とか消費というのは、いかにも社会学的らしい表現だと思ったが、門外漢の私にはよく分からないところがある。但し、【ケアでは】生産調整も在庫管理もできないということはその通りだと思う。もう1つ、「ハッピーな介護者でなければハッピーな介護はできない」と言われた点については、私も全く同感であったが、どういう論拠に基づいてそのような結論が出てきたのかは聞き逃してしまった。

次回に続く。