じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 「岡山タワー」(OHK岡山放送電波塔)が、11月12日〜25日まで、「女性に対する暴力をなくす運動」のシンボルカラーである「パープル」にライトアップされている。(11月12日の日記参照。)

 11月18日の夜、たまたまこの近くを通りかかったので、その華麗な様子を間近に眺めることができた。

11月18日(金)

【思ったこと】
_b1118(金)「こそ丸」は究極のプラセボ (placebo) か

 11月18日夕刻のNHK岡山ローカルニュースで、

特集 「心に効くからっぽの薬」

という話題を取り上げていた。この薬は、ホンモノの病院で売られているが(←但し病院の薬局ではなくて売店)、中身は空っぽ。服用する時はコップ1杯の水を用意し、容器のふたをあけて、いかにも錠剤を取り出して口に入れるような仕草をしてから水を飲むという。価格は1瓶105円、5年前に発売され、毎月300戸前後売れている。ここでしか売られていないため、遠方から買いに来られたり、社員のためにまとめ買いする社長さんも映っていた。

 番組を視た限りでは、この「こそ丸」は、何かを治すというよりも、職場や家庭内のちょっとしたいざこざや不満が生じた時に、空の薬を飲むという一連の動作をすることで、ほんのちょっとの間を作り、それによって怒りの爆発を抑える目的で利用されているようだ。じっさい、この「薬」はもともと、脳卒中の予防「薬」として開発されたという。ネットで検索したところ、「脳卒中のきっかけとなる日常の何気ない8つの行動」というコンテンツがあったが、その中の8番目として「怒る」も行動も含まれているので、この「薬」の服用で怒りが収まるのであれば、確かに予防薬としての効用はウソではないということになる。

 上掲の「こそ丸」は、空っぽとは言っても容器代とラベル印刷代を加えると105円を上回り、売れれば売れるほど赤字になるらしい。あくまで非営利で、広く普及することを目ざしているらしい。

 ところで、この種の「薬」はいっけん、プラセボ(プラシーボ、placebo) 」のようにも見える。リンク先にも記されているように、偽薬効果については種々の議論がある。もっとも、医学的に効果が証明されている薬であっても、実際には相当程度、暗示効果が含まれているのではないかという気もする。怒りを静めるために鎮静剤のようなものを飲んだとしても、その瞬間に効果が現れるはずなどない。飲んだ直後に怒りが静まるとしたら、これは偽薬効果、もしくは、今回同様、一連の服用動作で間を置くことで「ちょっと待て」効果が生じているものと思われる。

 なお、厚生労働省の通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(いわゆる「46通知(よんろくつうち)」等では、疾病の治療又は予防を目的とする効能効果の表現が規制されているようである。リンク先によれば、この「薬」については
不平不満がこうじて、頭痛や高血圧症、ねたみ、そねみなどで気分がすぐれず、体調の不良なとき。ストレスで心が病んでいるとき。即効性があり、ただし、効果が持続しないのも特徴です。
という「薬の効果」がうたわれており、かなりスレスレの表現ではないかとも思われるが、瓶が空っぽであることは誰の目にも明らかであり、空っぽであることを承知のうえで購入し、一連の服用動作のツールとして利用するということであれば、たぶん違反にはならないのだろう。

 もう1つ、医師法22条では、

医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合や、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
1.暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合
2.処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合
【以下略】
というように、暗示的効果に処方せんがマイナス効果を及ぼす場合や、処方せんが患者に与える不安などについては配慮するといった例外規定が盛り込まれているという。上掲の「薬」とは直接関係ないが、暗示的効果自体を認めているという点では留意しておく必要があるだろう。