じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 人間・植物関係学会2011年臨時大会の会場の窓から眺める新宿副都心方面。東京都庁のほか、はるか遠くに東京スカイツリーも見えていたが、いちばん目立つのは、やはりドコモタワーの尖塔か。

10月10日(月)

【思ったこと】
_b1010(月)人間・植物関係学会2011年臨時大会(2)作業意思決定支援ソフトADOCとマインドマップの活用

 昨日の続き。

 2番目の発表は、園芸作業等の選択において、どのような作業を選択するのかを支援するソフトADOC(Aid for Decision-making in Occupation Choice、通称エードック)とマインドマップ(商標登録)を組み合わせた活用事例であり、なかなか興味深いものであった。

 話題提供によれば、作業療法においてどのような作業を選択するのかということは、通常、クライエントとの面接・会話の中で決定されていくが、そのための明確な手順は無く、比較的任意に決められているのではないかという危惧がある。作業療法では、それを避けるために、COPM(Canadian Occupational Perfoemance Measure)やOSA(Occupational Self-Assessment)などが使われているが、これにはかなり熟練を要する。ここで紹介されたiPad専用アプリケーションであるADOC(主制作者:友利幸之介氏)はその点、比較的簡単な操作で、重要度や緊急度から優先順位をつけ、さらに選んだ作業の満足度を評価して支援プランを入力できるというメリットがあるということであった。

 またマインドマップは、園芸療法指導者が目標とする技法を決定する手順の可視化に有用であるということであった。

 この研究の背景には、ナラティブ・ベイスト・メディスン(Narrative Based Medicine、NBM)という考え方があり、この部分は大いに賛同できる内容であった。高齢者施設での園芸療法というと、あらかじめ用意されたポット苗をプランターに寄せ植えするような画一的な作業が連想され、かつ、作業開始前に比べて種々の心理尺度や生理指標で、ストレス解消や良好な気分変化が確認された、というような平均値の有意差で効果検証をするというようなやり方がいかにも科学的な取組であるかのように思われがちであるが、それぞれの個人個人の中で、日常生活の諸行動の中で園芸作業がどのように意味づけられ、重視され、かつ長期的にどのように関わっていくのかという中にこそ本当の効果がある。その際の恣意性を取り除く1つのツールとしてADOCは有用であるように見受けられた。またマインドマップも、可視化という点ですぐれた手法であると思われる。

 但し、これらのツール、とりわけマインドマップに関しては、商標登録が行われている関係で、他者が勝手に改ざんしたり、その長所を活かした新たなバージョンを提案するということは、著作権法上困難であると思われる。発案者の権利を保護することは重要であるが、研究発展のための自由な議論を困難にするという面もあるのではないかと思う。

 そう言えば、質的心理学でしばしば活用されているKJ法も、「著作権者の意思で、勝手に使って研修を行うことはできないし解説することもできません。出所を明らかにしただけではダメなのです。」などと言われている【←ネット上の記事からの孫引きのため、どの程度の法的保護が求められているのかは未確認】。また、Grounded Theory(GT)については不明。もっとも、いかなるケースにおいても、商用目的ではなく真理探究のために、研究者が、出典を明記した上で種々の既成の技法の有効性を比較検証し、その結果を公的な場で公表することは妨げられないのではないかとは思う。

 次回に続く。