じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



06月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
§§
2011年版・岡山大学構内でお花見(47)ユッカの花軸。

大学構内各所でユッカの花軸がニョキニョキと伸びている。直立する前の、鎌首のような湾曲した形も味わい深い。

6月10日(金)

【思ったこと】
_b0610(金)センター試験の2科目受験“裏技”論争

 6月10日配信のMSN産経ニュースに、

●2科目受験し解答時間を倍に…センター試験で“裏技”発覚 予備校「防止策が必要」

という見出しの記事があった。要約引用すると以下のようになる。なお、公式の実施要項はこちらで閲覧できる。

  1. 来年1月14、15日に実施される大学入試センター試験で、受験生に科目選択の幅を拡大するよう変更したところ、解答時間を不正に2倍に増やせる“抜け道”が発覚、関係者の頭を悩ませている。複数科目の問題が1冊の冊子となって出題されるため、2科目受験で申請すれば2科目分の試験時間を「本命」の1科目に割り当てることができてしまうからだ。
  2. これまでは地理歴史の「世界史A」「世界史B」「日本史A」「日本史B」「地理A」「地理B」と公民の「現代社会」「倫理」「政治・経済」の中からそれぞれ各1科目を選択。理科も同様で「理科総合A、化学I」「理科総合B、生物I」「物理I、地学I」の3グループから各1科目を選ぶ方式だった。
  3.  来年は、世界史Aと同Bなど同一分野の受験は不可とした上で地歴・公民の計10科目(新たに「倫理、政治・経済」が追加)から2科目を選択できるよう変更された。理科もグループ分けをやめ、計6科目から2科目を選べるようになる。
  4. 1科目だけ受ける場合の試験時間は60分、2科目なら130分だが、1科目目の答案用紙を回収後、2科目目の答案用紙を配布する。
  5. だが、試験が始まってから科目を選択できるように問題を1冊の冊子にしたため、1科目目を受験した段階で2科目目の問題を見て2時間解答に充てられる。
  6. 例えば、日本史Aのみ受験に必要な生徒の場合、1科目目に世界史A、2科目目に日本史Aを選択し、1科目目の時間から日本史Aの問題を解き始めることも可能。はじめの世界史Aが白紙答案でも、受験大学の採点対象になってなければ、合否には影響しない。
  7. 大学入試センターでは「そうしたやり方を本当に受験生がやったら不正だ」としながらも、「不正が可能な制度であることは間違いないが、試験の実施方法の変更は考えていない」。合否判定に1科目の成績しか利用しない大学にも2科目の成績と受験した科目の順番を提供する対策を取る方針だ。
  8. 大手予備校の担当者は「不正行為が多発すると、本命でない科目で低得点が続出し、平均点のぶれが大きくなる。得点調整が行われれば、すべての受験生に影響が出ることになる。不正がおきない仕組み変更が必要だ」と訴える。
  9. 文科省は「1科目選択の大学の場合は、(不正ができない)1科目目を採点するなど、防止策を入試センターと大学側で協議してほしい」としている。
 この件については、私の大学でも議論になっているところである。実施要項には、
なお,当該入学志願者が,地理歴史及び公民若しくは理科のいずれか又は両試験時間において2科目を受験した場合については,当該大学の入学者選抜において1科目のみを利用すると指定している場合であっても,各試験時間について第1 解答科目,第2 解答科目それぞれの得点及びその合計点。
と記されており、上掲の通り“文科省は「1科目選択の大学の場合は、(不正ができない)1科目目を採点するなど、防止策を入試センターと大学側で協議してほしい」としている。」というが、1科目選択の場合、「2科目受験した場合は、得点の高い科目のほうを採用する」と予告している大学・学部も少なくない。一般に、個別学力検査や大学入試センター試験において本学が課す教科・科目の変更等、受験生の準備に大きな影響を及ぼす変更については、2年前に予告・公表することとされており、「得点の高い科目を採用」を「1科目目として提出した答案の得点を採用」に変更することは、受験生の準備に大きな影響を及ぼすことに該当するのではないかという議論がある。

 では、現実に、2科目受験と1科目受験ではどの程度の不公平が生じるのだろうか。あくまで主観であるが、地歴・公民の解答の場合は、解答時間が60分であっても120分(プラス1科目目解答提出時間10分)であっても、時間の違いによる有利不利ということはあまり無いように思う。要するに、解ける問題であればすぐに解けるし、解けない問題はいくら時間をかけても正解を思い出せないだけである。但し、社会科系の問題にはけっこう暗記問題が多いので、試験開始時点で受験予定の2科目の問題をざっと閲覧し、「ヤマが外れた」科目を後から解答するように方針を立ててれば、1科目だけ受験の場合よりはかなり有利になると思う。この種の有利・不利は、「1科目目として提出した答案の得点を採用」という文科省の要請?に従っても、防止することはできない。

 いっぽう、理科系の科目、特に物理などでは計算をさせる問題が出題されることがあり、私個人がもし受験するのであれば、時間の長いほうが、じっくりと考え、検算もできるので有利になるように思う。また、いま述べた社会科系科目と同様に、試験開始時点で受験予定の2科目の問題をざっと閲覧し、「ヤマが外れた」科目を後から解答するように方針を立てることもできるだろう。

 けっきょく、会場別に2科目受験と1科目受験を実施する場合は、どのように対策を施しても不公平を無くすことはできないように思う。また、大学入試センターが「そうしたやり方を本当に受験生がやったら不正だ」と言っても、一生懸命解いたうえで低得点になった答案と、デタラメにマークして提出した答案を区別することはできないはずだ。

 ではどうすればよいのかということであるが、私自身は、2科目受験と1科目受験の不公平さはそんなに気にする必要が無いという立場である。そもそも、難関大学では、センター試験の得点は80%〜100%取らなければ合格できない。そのレベルの受験生であれば、試験時間が60分であろうが130分であろうが、正解できるのが当たり前であり、不公平などは問題にもならない。いっぽう、比較的入りやすい大学で1科目選択となっている場合は、仮に1科目を白紙答案で提出し2科目目のほうで120分(プラス1科目目解答提出時間10分)かけて解答したとしても、とにかく一生懸命考えて、本人として最善の答案が提出できるならば、それを評価してあげることも悪くはないと思う。また、「1科目目の答案用紙を回収後、2科目目の答案用紙を配布する。」というのも作業は煩瑣になるだけでミスの原因にもなりかねない。120分終了後に2科目の答案をまとめて提出させればそれでよいと思う。

 但し、上掲でも指摘されているように、「本命でない科目で低得点が続出し、平均点のぶれが大きくなる。得点調整が行われれば、すべての受験生に影響が出ることになる。」という別の問題点は残る。すでに試験実施要項
大学入試センターは,大学入試センター試験の本試験において次の各科目間で,原則として,20点以上の平均点差が生じ,これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合には,得点調整を行う。
  • 地理歴史の「世界史B」,「日本史B」,「地理B」の間
  • 公民の「現代社会」,「倫理」,「政治・経済」の間
  • 理科の「物理T」,「化学T」,「生物T」,「地学T」の間
なお,平成24 年度大学入試センター試験において新たに出題科目とする『倫理,政治・経済』については,得点調整の対象とはしない。
また,得点調整の実施の有無については,平成24 年1 月20 日(金)(予定)に発表する。
と発表されているが、少なくとも、調整候補科目について、1科目受験者と2科目受験者の得点傾向(平均点や得点分布)に著しい差があるかどうかはチェックしておく必要があると思う。「これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合には」という但し書きがついているので、事後的な分析により調整の有無を決定することはできるのではないだろうか。

 今回の変更は、全体の試験時間を短縮しつつ、選択できる科目の組み合わせが多様になるというメリットもあり、基本的には改善になっていると思う。そのことをふまえた上での発言であることをお断りしておく。