じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 上弦の月に吠える黒豹? 6月9日は梅雨空であったが、夕食後の散歩時には晴れ間があり、月齢7.6(午前11時11分上弦)の月が見えていた。馴染みのクロネコが出てきたので、月を背景に1枚。写真では獰猛に見えるが、実際は人によくなれている。シッポが丸いので「クロマル」と名付けており、親はオグロ。祖母はミケ。右耳に切れ込みがあるのは、「地域猫の会」の方々のご努力により避妊・去勢手術が完了していることを示す。

6月9日(木)

【思ったこと】
_b0609(木)永瀬拓矢四段のスゴイ将棋と先日手の功罪

 6月5日(日)に録画しておいた、

NHK杯テレビ将棋トーナメント:佐藤康光・九段 vs 永瀬拓矢・四段

の対局を、食事中に再生しながら、チビリチビリと観戦していたが、木曜日にようやく最後まで視ることができた。

 この対局を録画しておいたのは、永瀬拓矢四段が 佐藤康光・九段を相手にどこまで健闘するか、大いに興味があったためである。ウィキペディアのリンク先にもあるように、佐藤九段と言えば、タイトル通算獲得数は歴代6位、永世棋聖の資格保持者、A級棋士、2011年4月1日から日本将棋連盟の棋士会長を務める強豪であり、NHK杯では2006年と2007年の2回の優勝記録がある。

 いっぽう、永瀬四段のことは、昨年度までは全く存じ上げなかったが、アンテナに登録している日本将棋連盟・プロ棋士記録のページで、連勝ランキングでダントツの18連勝、トップとなっており、どんな将棋を指す人なのか、機会があれば一度、観戦したいと以前から期待していたところであった。

 もっとも、録画した放送を見終わらないうちに、上掲の連勝ランキングで永瀬四段の連勝が6月1日にストップしてしまったことを知ってしまったので、連勝をストップさせたのは佐藤九段に違いないと思い込んでしまっていた。(実際には、永瀬四段は、棋王戦予選で横山五段に敗れたということが後から分かった。)

 さて、本題の対局のほうだが、NHK杯テレビ将棋トーナメントでは前代未聞の、2局連続の千日手となってしまった。解説の鈴木大介・八段によれば、永瀬四段は「千日手名人」として知られており、全対局の約1割が千日手、しかも千日手指し直し局で負けたことがないというという珍記録を持っているとか。なお、鈴木大介・八段は、永瀬四段のことをよくご存じで、
  • 振り飛車党で、特に三間飛車を得意としており、大山十五世名人を彷彿とさせる
  • 受け8割の棋風。
  • 若手の中では一番勉強量が多いんじゃないか。
  • 序盤、独創的で毎回違う手を指してくる。
と表しておられた。鈴木大介・八段はまた、「2006年、第77期棋聖戦挑戦者決定戦で羽生善治を下し、佐藤康光へ挑戦したが、3連敗を喫して初タイトル奪取に失敗。」などの経歴もあり、佐藤九段の強さにも熟知しておられる。本局の解説者としては、最適任者であった。

 勝敗のほうはリンク先の通りで、131手をもって永瀬四段の大金星となった。次の対戦相手はプロ棋士のキャンパスLIFEブログでも知られる広瀬章人王位(早稲田大学教育学部数学科在学)ということで、これまた楽しみである。




 ところで、今回の対局は、日本将棋における千日手(Threefold repetition)の功罪を考えるきっかけにもなった。永瀬四段の対局観は、どうやら、単に自分が不利な時に千日手に持ち込むというだけでなく、確実に有利と見える局面になるまで、何度でも千日手を繰り返すというところにあるらしい。これは、競技者にとっては有益な戦略であるとも言えるが、観戦をする側から言えば、引き分けばかりの試合を見させられるようなものであり、しだいに退屈になってしまう。

 おそらく、将棋力最強のコンピュータどうしが対戦した場合は、序盤の駒組みをいろいろに指定して何回対局させても、最後は千日手、もしくは、両者入玉で決着がつかないという終わり方になってしまうかもしれない。

 もっとも将棋はゲームであるからして、新たに先日手回避のためのルールを作れば問題は解決するだろう。現在のところは「一方が連続王手を繰り返したために千日手になった場合は、王手をかけていた方が反則負けとなる規定がある」というルールだけのようだが、それに加えて例えば「先日手をしかけた場合、指し直し局では香落ちとする」とか、「持ち時間を半減する」、などのハンディを課せば、両者とも千日手にならないように工夫をすることになるであろう。