じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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岡山県岡山では、2月10日から11日にかけて3ミリの降水量があった。雪が降っていたが、屋根の上や芝地がうっすら雪化粧する程度で、積雪には至らなかった。写真は午前07時前、うっすらと雪化粧した半田山(写真上)と京山(写真下)。

2月10日(木)

【思ったこと】
_b0210(木)行動主義の再構成(12)行動主体の視点はどうやって観察できるのか(2)広義の弁別行動

 昨日の日記で述べたように、「変化」、「特徴」、「異なる」、「手がかり」といった議論をする時には常に暗黙の前提がつきまとう。哲学の根本に立ち入る議論をすればキリが無いが、ここでは「弁別行動」を公理として位置づけたいと考えている。

 広義の「弁別行動」というのは、ある個体を取り巻く環境(またはその一部の要素)が、AとB、...というように2通り以上に異なっていた時、それぞれに対して異なった行動をとるということである。但し、暑い時に汗をかいたり、寒いときに震えるというのは典型的なレスポンデント行動であり、「気温を弁別している」とは呼ばない。通常は、レスポンデント行動、確立操作、強化されているかどうかによる行動の違いは「弁別行動」とは呼ばれない。これらを除外した上で、オペラント行動における狭義の(オペラント)弁別は、直前または同時に出現している環境の特定要素(刺激)の違いに応じて、オペラント行動の生起頻度を変えるようになることとして定義される。

 しかし、今回は、そうした細かい区別にはこだわらず、とにかく、「ある個体を取り巻く環境(またはその一部の要素)が、AとB、...というように2通り以上に異なっていた時、それぞれに対して異なった振る舞いを見せる」ことをすべて「弁別行動」と呼ぶことにしておく。

 さて、ここで再び重要となってくるのは、行動主体の視点である。「異なる」か「同じ」かということは、系統発生的、個体発生的、さらには社会的要因によって多種多様に構成されるということである。

 例えば、犬を散歩に連れて行く時、飼い主は、空の様子を見た上で傘を持参したり、あるいは何も持たなかったりする。この場合、空の様子の違いによって飼い主は異なる行動をとっているので弁別行動がなされていると言える。しかし、散歩に出かける犬は多少の雨には躊躇しない。つまり、空の様子は、飼い主にとっては「異なる」が、犬にとってはいつも「同じ」である。

 いっぽう、散歩中の犬は、電柱、柵などに対して、ニオイを嗅ぐとかオシッコをひっかけるというように様々な行動を示す。要するに、犬にとっては、それらは、嗅覚的にきわめて重要な違いがあるのである。しかし、飼い主にとっては、どれもこれも同じである。

 人間はさらに、自分自身の経験、教育、他者からの伝聞によって、さまざまな弁別行動を身につける。さらに重要なことは、みずから身につけた弁別行動を、何らかの信号を介して、他者に伝えることができる。信号を受け取った相手は、それを利用して、自らが直接体験しなくても同じように弁別することが可能になる(←そのプロセス自体も弁別行動の一種)。そうした伝達の大部分は言語行動として行われている。


 不定期で、次回に続く。