じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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§§ 2010年版・岡山大学構内の紅葉(29)座主川沿いの紅葉

 座州川沿いにはいろいろな種類の落葉樹があり、この季節、落ち葉の絨毯の上を散策することができる。紅葉はほぼ終わりだが、代わって、サザンカの花が咲き始めている。

12月10日(金)

【思ったこと】
_a1210(金)日本質的心理学会第7回大会(11)現場の心理学はどこまで普遍性をもちうるのか(1)普遍性と客観性

 大会2日目の朝、浜田寿美男(奈良女子大学名誉教授)による、

●「現場の心理学はどこまで普遍性をもちうるのか:渦中の視点と観客の視点」

というタイトルの基調講演があった。但し、これはプログラム冊子に記されたタイトルであり、当日配布された資料では、

●「現場の心理学はどこまで普遍性をもちうるのか・・・・・・というか、現場を離れて普遍性はあるのか? 私の出会った二つの立場から

というように一部修正が加えられていた。

 ここで念のため確認させていただくが、今回取り上げられる話題は「普遍性」であって「客観性」ではない。自然科学では一般に客観性が重視されるが、必ずしも普遍性を扱うとは言えない。実際に導き出される法則や理論は、常に限定的であって、一定の条件、範囲のもとで成り立ち、時として例外もあれば確率的に変動することもある。但し、種々の要因が測定可能であって、それらの組み合わせや相互作用によってこれから起こる現象が100%予想できるのであれば、そこで用いられた法則は普遍的であると言える。小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還するまでのプロセスはきわめて特殊な事例であると言えるが、そこで応用された法則はそれぞれに普遍性を持つ。またプロセス全体は客観的に記述することが可能である。

 でもって今回の話題提供であるが、「視点」というキーワードから展開された内容は、客観性に関する議論を含んでいたように思われた。ともかく、我々は、世の中の現象を客観的に捉え、操作し、小惑星探査機「はやぶさ」のような壮大はプロジェクトを成功させることができるが、そのことと、日常生活で「客観的に起こった」ように受け止めてしまうことの間には大きな違いがある。とりわけ対人的な場面では、相手と自分との間に起こる現象は通常、客観的な視点で捉えられるものではないし、客観的であるほうがいいというわけでもない。むしろ、自分の視点、相手の視点、共同性といった形で把握したほうが現実的であり、客観性では語れない数多くの現象を合理的に説明できる場合があるのではないかというのが、今回の基調講演のポイントの1つになっていたように思えた。

 次回に続く。