じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§ 夕食後の散歩に出かける時、北西の空に大きな月が出てきた。天文年鑑によれば、月齢は20.1。かなり北に偏ったところから出ている(9月30日が赤緯最北)。写真上はデジカメの光学5倍ズームで撮影したもの。写真下はそれをさらに2倍に拡大したもの。コンパクトデジカメでも、かすかにクレーターを写すことができる。

9月28日(火)



【小さな話題】

小室直樹氏ご逝去

 各種報道によれば、評論家の小室直樹(こむろ・なおき)さんが9月4日にお亡くなりになった(東京工業大学世界文明センターが9月28日に発表したことで、ようやく明らかになった模様)。

 ウィキペディアにも記されているように、小室直樹氏はさまざまな活動をされたことで知られており、一部には奇人と評されることもあったという。

 ウィキペディアに
1961年、再びハーバード大で、バラス・スキナー博士から心理学、タルコット・パーソンズ博士から社会学、ジョージ・ホーマンズ教授から社会心理学を1年の間学んだ。

...

小室は、市村真一の期待を一身に受け、経済学の本場アメリカに留学することになるが、研究を進めるに連れて、ヒックス、サミュエルソン、アローなどにより理論経済学の研究は完成されてしまったと考え、社会学と政治学の理論化を研究しようと決意する。そのためには、当時実証科学の条件を満たしていた心理学を学ぶことが社会学や政治学の理論化に有益であると考え、スキナーの下で行動主義心理学を学び、学問の分野を超えて最先端の「正当な学問」を身につけて帰国するが、経済学から転向することを告げると市村から破門された。
と記されているように、小室氏は、スキナーから直接指導を受けた数少ない日本人の一人でもあった。

「社会科学における行動理論の展開」(岩波書店『思想』、1968年)

という論文は私のところにもコピーがあるが、十分には理解できていなかった。小室氏のその後のお考えがどのように変遷していったのかも全くフォローできていない。行動分析学会で話題にされたことも殆ど無かったと思う。

【思ったこと】
_a0928(火)フロッピーディスクのタイムスタンプは証拠になるのか?

 大阪地検特捜部が押収したフロッピーディスクのデータを改ざんしたとされる事件が報道されている。このニュースを初めて聞いた時に私が感じた素朴な疑問は、
  1. なぜバックアップをとっていないのか。
  2. タイムスタンプ機能は証拠になるのか。
ということであった。

 このうち1.については、専門的なことは知らないが、単純なディスクコピー機能のほか、断片化したファイルや消去した痕跡をそのまま残すような形のバックアップもとれる特殊なツールがあるはずだ。

 いっぽう2.であるが、私の理解している限りでは、パソコンのファイルやデジカメ写真のタイムスタンプは、すべて、それを保存する機械本体の時計に依存している。パソコンの「日付と時刻のプロパティ」機能を使って日付を1年前に戻せば、そのファイルは1年前に保存されたというタイムスタンプがつくはず。デジカメでも同様で、日付の設定など任意にできる。刑事コロンボに登場しそうなネタになるが、例えば殺人犯人が、被害者のデジカメの日時を故意に変更しておいて、被害者が犯行時刻の数時間後まで生きていてデジカメ写真を撮ったというようなアリバイを作ることは簡単にできる。また、このことに限らず、デジカメ写真のタイムスタンプ自体は、何かの事件の正確な日時の証拠にはなり得ないものと思う。

 パソコンの時計を10日前に戻した上で、改ざんしたファイルを保存すれば、タイムスタンプは10日前の日付になるはずだ。但し、そのフロッピーディスクに複数のファイルが保存されていて、すでに保存しているファイルよりも前の日付で新規保存をしようとすると、整合性に矛盾が出てくる可能性がある。9月28日の朝日新聞記事でも、「タイムスタンプ変更機能を使えば、表面的な日時は書き換えることができても、ファイル内の様々な日時情報を矛盾なく整合させるのはコンピュータの専門的知識があっても困難」というような解説があった。

 デジカメで撮影した写真(jpeg形式)の場合は、写真ファイルを右クリックしてプロパティを表示させると、作成日時、更新日時、アクセス日時が表示される。但し、上にも述べたように、この情報は、デジカメやパソコン本体の時計に依存する。このほか、「概要」を見ると、使用したカメラのモデル、焦点距離、F値、露出時間など、撮影時のさまざまな情報を表示することができる。画像処理ソフトで修正をするとこうした情報は消えてしまうので、写真ファイルが本当にそのカメラで撮影されたものか、それともあとから修正を加えたものかという判別はできる。もっとも、このWeb日記を書くときに使っているMifesで写真ファイルをバイナリ表示させると、デジカメで撮影した時の情報がファイルのどの位置に書き込まれているのかを表示することができる。専門的知識があれば、その部分を書き換えることで、画像処理したインチキ写真をデジカメで撮影した写真であるかのように見せかけることはできるかもしれない。

 とにもかくにも、刑事裁判では、フロッピーディスクやデジカメ写真はどこまで証拠として採用されているのだろうか。上掲の朝日新聞記事を見る限りでは、今回、改ざんを行ったとされている特捜部長らは、コンピュータにはあまり詳しくないとのことである。裁判官も裁判員もみな素人である。それらを証拠として採用する場合には、どこかで専門家による綿密なチェックが求められると思うのだが、大丈夫だろうか。

 なお、ブログなどでは、誹謗中傷や問題発言を書き込み、後日、こっそりと削除するということをする人がいる。しかし、ネット上でいったん公開されたコンテンツは、いろいろなところでキャッシュとして保存されている。例えば、http://www.archive.org/を利用すると、何年も前のコンテンツがそのまま閲覧することができる。こちらのほうは、当事者が勝手に改ざんできないので、かなりの証拠性があるように思う。