じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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§§ 近所の空き地で見つけた、萩のお花畑。

9月18日(土)

【思ったこと】
_a0918(土)[一般]ムハマド・ユヌスとマイクロクレジット

 2010年9月13日(月)放送の

NHK ギフト〜E名言の世界〜

で、2006年ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス(銀行総裁・経済学者)が取り上げられていた。ユヌスはバングラデッシュの裕福な家に生まれ米国で経済博士号を取得し助教授を務めていたが、バングラデッシュ独立後に母国に帰国。実際に貧しい人たちと接する中で、それまで学んだ経済学が貧困の悪循環からの脱却には無能であることを悟り、新たに、マイクロクレジットを始め、その後グラミン銀行を創立したことで知られている。

 ウィキペディアにも記されているように、マイクロクレジットの融資の手法は、
  1. 極少額の返済
  2. グループに対して貸付けし、返済を怠るとグループ全体が連帯責任を負う制度
  3. 定期的返済
といったところにあり、
世界銀行の見積もりでは、7000以上のマイクロファイナンスを実施する機関があり、約1600万人もの開発途上国の人々にサービスを提供している。ルモンド紙によれば、世銀の専門家は30億人の貧困状態にある人々のうち5億人がこれらの低額の貸し付け(80ユーロ程度)を受けたことがあると見積もっている。カンボジアやケニアなどがその例として挙げられる。また、アジア太平洋地域で貸し付けの83%を占めている。
となっているという。番組では、バングラデッシュでの返済率が98%に達していると紹介されていた。

 経済学については全くの素人なので、その仕組みについてはイマイチ分からないところがあるが、少なくとも、貧民救済のための生活資金の貸し付けとは異なり、能動的に事業を起こそうとしている貧民層への融資を目的としているようである。単なる募金や生活支援であれば、受け取った人たちは消費しかしないが(←但し、そういう形でも消費が拡大すれば、売る側の利益も増えて、何かしら経済発展することはありうる)、上記の融資はあくまで起業への投資であるので、成功すれば回収率が上がり、銀行として採算がとれるという仕組みであろうと推察できる。

 素朴に考えると、貧困層が小規模な企業を立ち上げても、徹底した効率化を進めている大企業には太刀打ちできないような気がする。但し、番組でも紹介されていたように、精巧な竹細工で生計を立てている貧困層にとっては、それまでの悪循環(銀行から融資を受けられないため、高利貸しからお金を借りて材料を買い、買い方の言い値で買い取ってもらうので、いつまでたっても借金地獄から逃れられない)から脱却し、自立した竹細工工房を経営するということはできるだろう。

 いま述べたように、付加価値のついた地場産業や、(設備投資の要らない)人手が全ての業種であればこういう形で発展する可能性があるが、高価な工芸品のような物は、けっきょくは、世界のどこかに金持ちが居ないと買ってもらえないわけだから、貧困層のボトムアップはできても、究極的な格差解消には至らないようにも思える。なお、ウィキペディアの当該項目によれば、ユヌスは、社会的利益を追求する企業と、貧しい人々により所有され最大限の利益を追求して彼らの貧困を軽減するビジネス、という2種類のソーシャル・ビジネスを挙げているという。

 ソーシャル・ビジネスについても素人なのでよく分からないが、中には貧困ビジネスとか、ムハマド・ユヌスの功績を紹介しつつも実際には何の縁もない投資勧誘などもあって、注意が必要であろうとは思う。