じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§ 秋を迎えた田んぼ。

 9月16日の岡山は日中は30.5℃まで上がったものの、日没後はぐんぐん気温が下がり、翌9月17日の朝にはついに20℃を下回った。この夏は、寝る前に水風呂に入るのを楽しみにしていたが、寒すぎで爽快感が得られなくなってしまい、16日をもって打ち切りとした。

 写真は稲穂のついた田んぼ。

9月16日(木)



【小さな話題】

「鬱」という漢字の覚え方と真の意味

 9月16日の

NHK みんなでニホンGO!

の前半では「鬱」という漢字が取り上げられた。

 番組では、29年ぶりの改訂で、この文字が常用漢字に加わることになった経緯が紹介され、さらに、この文字の覚え方や本来の意味が解説された。

 ネットで調べた限りでは、これまでの常用漢字で最も画数が多かったのは「鑑」の23画、「鬱」は29画であり、これを超えることになる。(画数最多の漢字については、こちらに情報あり。)ワープロでも携帯でも簡単に漢字変換できることから、常用漢字採用にあたって、画数の多さはあまり問題にならなくなったのだろう。

 とはいえ、いざ、白い紙の上に「鬱」という漢字を書いてくださいなどと言われても私にはまず無理だ。今回の番組では「憂鬱なリンカーン(林缶)は(ワ)、アメリカン(※)コーヒーを三杯(彡)飲んだ」という語呂合わせが紹介された。ついでに「挨拶」を「あいさつ代わりに両手でムリヤリ、三回食っタ」も紹介された。(←いずれも、高校教師・漢字研究家の根本浩先生のアイデア。) このほか、南伸坊氏の「林の中にキャンプに行ったら缶が落ちていた。米(※)を火(ヒ)で炊いたら風(彡)が吹いて生煮えになってガッカリ」というのも覚えやすい。

 もっとも、歴史の年号のような無意味な数列とは異なり、漢字には字源というのがある。番組でも言及されたが、こちらにも記されている通りで、
会意形声。「林」+音符(ユウ:「臼」+「缶」+「鬯」)。音符の文字は、瓶にこもらせ酒に香草でにおいをつけることを意味する会意文字。木に囲まれ、ふさがった様子。
というのが元々の成り立ちのようだ。

 上の字源にも由来するが、鬱という文字には「立ちこめている」(←但し、拡散しているのではなく詰まっている)いうような意味がある。じっさい「鬱蒼」や「鬱憤」はまさに「蒼」や「憤」がいっぱいあって詰まっている状態である。これが「憂鬱」と同義のように使われるようになったのは、大正時代の作家、とりわけ、萩原朔太郎、夏目漱石、芥川龍之介、島崎藤村らが好んでこの2文字を使い始めたためらしい。日本古来の「憂し」、「憂さ」では表しきれず、重量感のある「鬱」と合わせて熟語として好んで使われたようだ。

 ちなみに私自身は、「鬱」という状態を実感した記憶が無い。いつも妻の前では「人生は空しい」とか「はかない」という言葉を多発しているが、空しいというは何も詰まっていない状態であって、ある意味では「鬱」とは正反対の意味になる。辞書的には「鬱」の反対語は「」が当たるそうだが()、私にはむしろ「空」か「虚」のほうが「鬱」の反対であるような気がしてならない。

「鬱」の反対の状態は「躁」ではない。「躁」と「鬱」で同じ状態であって、詰まっているか外に出ているかの違いにすぎないと思う。