じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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2010年版・岡山大学構内でお花見(16)岡大西門のシダレヤナギの花

 3月16日付けの楽天版で、シダレヤナギの開花の早さに驚くという話題を取り上げたところであったが、本日たまたま岡大西門のシダレヤナギを見たら、ちゃんと同じように花をつけていることが分かった。3月19日の岡山は最低気温が3.0度まで下がり、水たまりにはうっすらと氷が張った所まであったが、シダレヤナギの花を見て春が確実に進んでいることを実感。


3月19日(金)

【思ったこと】
_a0319(金)[心理]タダでもうける?!“無料ビジネス”の舞台裏(8)無報酬の方がすすんで働くことがある、と言うが...(1)

 じぶんが利用している無料サービスのことを長々と書いてきたが、今回は、きっかけとなった番組:

NHKクローズアップ現代:タダでもうける?!“無料ビジネス”の舞台裏

の後半部分、無料ビジネスのもう1つの側面として言及された「人は無報酬の方がすすんで働くことがある」について考えを述べることにしたい。

 番組で紹介されたアリエリー教授の「実験」は、
通りすがりの人に、「お金を払うからトラックからソファを降ろすのを手伝ってほしい」と依頼すると、殆どの人は、「何もお金が欲しいわけじゃない」と怒って立ち去った。ところが次に、金銭の話をいっさいせずに、ただ助けて欲しいと頼んでみると、ほぼ全員が何の見返りも求めず喜んで手を貸した。
この実験から得られた結論は、
お金の話抜きで、誰かの役に立つことによって、人から感謝されたり評価されたりする心地よさ、人間が持つこの性質がビジネスのコストを引き下げ、ウィキペディアのような報酬無しで作られるものを産み出す。
というものであった。

 具体的な例としては、ウィキペディアへの執筆行動のほか、金銭報酬無しで各地の気象状況を報告するという行動が取り上げられた。後者に関しては「利用者から寄せられる感謝の言葉が何物にも代え難い報酬だ」という解説や「発信することによって面白いものをみつけたというのを誰かが見てくれるのが楽しいですよね。人の役に立つ それが一番ですね」という情報提供者自身の言葉が紹介されていた。



 以上の内容だが、うーむ、どうだろうか、私には、こじつけ解釈が横行しているようにしか思えなかった。

 まず、アリエリー教授のデモ実験のような例は、昔から援助行動の実験としてはたくさん行われており目新しいものではない。いずれにせよ、トラックからソファを降ろすというのは、1回限りの手助けであって、しかも、通りすがりの人がそれほどの手間や時間をかけずに協力できる軽作業である。これらと同じメカニズムで、ウィキペディア執筆や気象情報提供が継続的に行われているとはちょっと考えにくい。

 ボランティア活動一般もそうだと思うが、我々は別段、人の役に立つことを使命として行動しているとは限らない。私のところの今年度の卒論研究でも明らかにされていたが、これから社会へ進出していく大学生の場合は、自己の将来的利益を得る、成長の機会を持ちたいなどの自己志向的要因によって活動を継続する者も少なくないようである。もちろんそれらは結果的には人の役にたつかもしれない。しかし、それらの行動は、よりたくさん役に立つという方向に向かうのではなくて、よりたくさん、自分のためになるという方向に発展していくのである。テレビで紹介されていたウェザーニュース協力者の場合も、確かに「人の役に立つ それが一番ですね」と語ってはいるが、本人の言明が行動の真の原因であるとは必ずしも言えない。「発信することによって面白いものをみつけたというのを誰かが見てくれるのが楽しいですよね。」という感想前半は、人に感謝されることの喜びというよりも、他者との交流ができたという喜びに近いのではないだろうか。

 次回に続く。