じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 1月30日に続いて、岡大の石庭と月の写真。今回の月齢は18.7。月が南の空に移動したため、前回と異なり、北側から南方向を向いて石庭を写している。石庭の昼間の写真はこちら


2月3日(水)

【思ったこと】
_a0203(水)[一般]トヨタ自動車の品質管理と高速道路無料化社会実験に必要な視点

 2月3日朝のNHKおはよう日本で、「トヨタ 品質管理を見直しへ」という話題が取り上げられていた。記録サイトから要約引用すると、
  • アメリカなどで販売した車440万台余りでアクセルの部品に不具合が見つかった大量リコールの問題で、トヨタは車の内部の環境変化が部品の不具合を引き起こすおそれがあることを事前に見抜けなかったことから、検査項目を増やすなど、品質管理の見直しを進める方針。
  • 大量リコールの原因となった不具合は、何度も踏み込んだアクセルの部品が摩擦ですり減ったところに暖房の風が当たると、温度の変化によって部品に水滴が付き、最悪の場合、アクセルが戻らなくなるおそれが生じるというもの。
  • トヨタの佐々木眞一副社長は、2日の記者会見で、「部品ごとに耐熱試験などは実施しているが、車両全体のシステムという意味で、試験が抜けていたと言われても言い逃れはできない」と述べ、個別の部品の検査は尽くしていたものの、車内部の環境変化が部品に与える全体的な影響を想定した検査が十分でなかったと認めた。
というような内容であったが、特に印象に残ったのは、「車両全体のシステム」という視点である。「アクセルの部品の不具合」というとまず思い浮かべるのは部品の欠陥であり、工程上、あるいは検査体制の手抜きが原因であろうと思ってしまう。しかし、今回の場合は、「アクセルの部品が摩擦ですり減る」というだけで事故が起きるわけではないようだ。部品が破損しなければよいという意味での耐久性であれば、多少すり減っても安全性は確保できたはずだ。ところがそこに、「すり減ったところに暖房の風が当たると、温度の変化によって部品に水滴が付き、最悪の場合、アクセルが戻らなくなるおそれ」という別の要因が重大な影響を及ぼすことが判明した。

 心理学の研究においても言えることだが、個々の要因の単独の効果だけを取り出して 実験的に検討しても、人間行動全体をうまく説明できないことは往々にしてある。やはり、全人的な視点や諸要因の複合的効果を重視していかなければならない。




 さて、朝のニュースでは

●高速無料化 37路線で実施へ
●高速無料化 今後の検証課題に

という話題も取り上げられていた。同じく要約引用すると
  • 国土交通省は、高速道路無料化の段階的な実施に向けた社会実験を、北海道横断自動車道や山陰自動車道など、地方の高速道路を中心とした全国の37路線で、ことし6月をめどに実施する方針を固めた。
  • 実験では、経済効果などとともに渋滞などの影響も検証し、無料化のメリットとデメリットをきちんと示すことができるのかが課題となる。
  • 前原国土交通大臣は2日の記者会見で、今回の社会実験の結果を踏まえて最終的な高速道路無料化のあり方を決める考えを示しており、実験では経済効果などとともに渋滞などの影響も検証し、無料化のメリットとデメリットをきちんと示すことができるのかが課題となる。
というような内容であったが、うーむ、一部の区間だけを無料化して「社会実験」を行うというのは、上記のトヨタ自動車の品質管理に置き換えれば、要するにアクセルの部品だけを引っこ抜いてきて耐久実験をやるようなものだ。果たして、経済効果、無料化のメリットやデメリットをちゃんと分析できるのだろうか。

 ちなみに、上記の無料化の社会実験対象区間には岡山自動車道の「北房JCT〜岡山JCT」が含まれるということである。しかし北房ICあたりで一般道に出たとしても、訪れることのできる観光地はホタルの里、コスモスパーク北房(←昨年度は一昨年度より規模が1/3縮小されたとか)、いくつかの鍾乳洞程度のものである。また、上記区間が無料化されたのちに岡山からこのルートをたどって蒜山ICまで行こうとすると、残りの有料区間52.kmの距離で1500円がかかる。いっぽう、現時点で、岡山ICのすぐ近くの吉備SAスマートから蒜山ICまで通行すると98.9kmで2700円、しかし平日通勤割引を利用すれば半額の1350円で済む。要するに、普通車で岡山から蒜山まで行こうと思えば、休日特別割引1000円でも、無料化ののちの1500円でも、あるいは平日の通勤割引1350円でも大差ない。

 上記の例に限らず、要するに、地方道の一部区間を無料にして社会実験を行ったところで、その区間だけを通行する車はほとんどあるいまい。全区間無料の時に想定される経済効果、渋滞等、あるいは利用者のメリット・デメリットは全く予想することができず、科学的な実験と言えるのかどうかは甚だ疑問である。