じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 旧・事務局の屋根の上に輝く火星(1月27日午前05時44分頃撮影)。

 アストロアーツの情報によれば、2010年1月の火星接近は、地球にいちばん近づくのが1月28日で、9933万km、明るさはマイナス1.2等。大接近の時の5600万kmよりは遙かに遠いが、冬の澄んだ夜空ではマイナス1.47等のシリウスに次ぐ明るさとなっていて非常に目立つ。


1月27日(水)



【小さな話題】

ほめる力

 1月26日放送のNHKクローズアップ現代で「ほめる力」という話題を取り上げていた。この話題は先月にも聴いたことがあったぞと思って検索したところ、
  1. 【2009年5月23日放送】NHKおはよう日本で「言葉で伝えたいこの思い」
    →水野スウ・中西万依編『ほめことばのシャワー』の紹介/石川県の中学校での取り組み/他 ほめ言葉の効果というよりも、自分の気持ちを言葉で伝えることに重点が置かれていたようであった
  2. 【2009年12月17日放送】NHKニュースウォッチ「教育にビジネスに“ほめ言葉”」
というように少なくとも2回、過去に紹介されていたことが確認できた。番組記録サイトにも記されているように、今回のクローズアップ現代は、上記1.と同様に水野スウさんが登場しておられたが、内容的には1.や2.とは違う取材場面であり、どちらかと言えば、「ほめ言葉」自体の効用よりも、自分の存在価値をポジティブに評価してもらうことの長期的・全人的な効用を重視していたように思われた。

 ほめ言葉の効用については、行動分析学の入門書でも付加的な好子出現随伴性として強調されているところであるが、それはあくまで、具体的な行動に付与する結果としての効果である。今回の番組で強調されているような効果はそれとは違っていて、相手の存在、隠れた長所、目立たない役割などについての長期的な評価であり、どちらかと言えばRachlinが言うような目的論的行動主義の視点に一致するようにも見える。

 ちなみに、私自身は他者からほめられることをあまり好まないタイプである。あまり付き合いの無い人から唐突にほめられたりすると、どうせお世辞だろう、何か下心があっておだてているだけだろうと、逆にムカムカしてしまう。また、私自身が他者をほめると、九分九厘は皮肉になってしまう(←妻からいつもそう言われている)。

 他者との良好な関係を保つことは大切だとは思うが、私個人は別段、他者からの評価や評判を気にして生きているわけではないし、そんなに嬉しいとも思わないなあ。自分自身はそんなに大した人間だとは思わないが、他者からの肯定的評価が無ければ生きていけないほど弱い人間でもない。ま、病床で介護を受ける身の上になれば考えが変わるかもしれないけれど...。

 私の好きな本の1つに太宰治の『お伽草紙』がある。その中でもとりわけ、『浦島さん』の短編はお気に入りである。
「ええ、さうです。言葉といふものは、生きてゐる事の不安から、芽ばえて来たものぢやないですかね。腐つた土から赤い毒きのこが生えて出るやうに、生命の不安が言葉を醗酵させてゐるのぢやないのですか。よろこびの言葉もあるにはありますが、それにさへなほ、いやらしい工夫がほどこされてゐるぢやありませんか。人間は、よろこびの中にさへ、不安を感じてゐるのでせうかね。人間の言葉はみんな工夫です。気取つたものです。不安の無いところには、何もそんな、いやらしい工夫など必要ないでせう。
ま、いったんは悟ったように見えた浦島も最後には
さうして、浦島は、やがて飽きた。許される事に飽きたのかも知れない。陸上の貧しい生活が恋しくなつた。お互ひ他人の批評を気にして、泣いたり怒つたり、ケチにこそこそ暮してゐる陸上の人たちが、たまらなく可憐で、さうして、何だか美しいもののやうにさへ思はれて来た。
となって、竜宮を去ることになった。私自身が浦島と同じ道を辿るかどうかは定かではない。