じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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2009年版・岡山大学構内の紅葉(29)「落ちないアメリカフウ(モミジバフウ)」、まだ落ちない

岡大七不思議の1つに数えられている「落ちないアメリカフウ(モミジバフウ)」。12月17日の日記にも写真を掲載したが、10日経った12月27日でもなお葉っぱを残している。

そろそろ受験シーズンとなる。この樹の前で合格祈願をして、葉っぱを受験票ケースなどに入れておけば、お守りになるかも。


12月27日(日)

【思ったこと】
_91227(日)[心理]東北アジアの幸福観(7)世俗主義の幸福論(3)マシュー・アーノルドと、ジョン・スチュアート・ミル

 昨日の続き。

 ジェレミー・ベンサムとトマス・カーライルに続いて、マシュー・アーノルドの分析と、ジョン・スチュアート・ミルの分析が紹介された。

 マシュー・アーノルドは、カーライル的な禁欲主義が「ヘブライズム」の伝統を踏まえた禁欲的ピューリタリズムの典型であり、近代社会の道徳的基盤としてそれなりに意味のあると分析しつつ、そこから生まれるペシミズムは無批判な拝金主義、すなわち「人間は下劣な存在なのだから、下劣な欲望以上のものを求める必要はない」という考えに結びつく恐れがあると指摘したという。この世で追求すべきは自己形成であり、これは、「ヘブライズム」をふまえつつ「ヘレニズム」の優れた幸福論を接合することでなりたつ。これは、現世において人間として自己を完成する「教養」の思想につながる。なお、ネットで検索したところ、アーノルドに関して「アーノルド『教養と無秩序』の生成と構造」という論評があることが分かった。教養教育に関するFDの研修会の席上でも、どこかでアーノルドの話が出てきたような記憶がある。

 次にジョン・スチュアート・ミルの分析。ミルは、カーライル的禁欲主義は、現世において人間がそこそこ幸福になれるという事実を無視する間違った学説であるとした。また、ベンサムの功利主義のほうも含めて、人間が利他的あるいは高尚なことがらに幸福を見出すという事実を見落としていて、両者ともども、社会の健全な発展を妨げる有害な思想であると分析した。ちなみに、ミルの自己形成の幸福論は、ミルの妻ハリエットが信仰していたユニテリアニズムとも相通じるそうだ。

 余談だが、ミルは、歴史上の天才の1人として知られており、IQは200前後であったと言われる。このIQは、幼少時の学習量や、著作物の中の語彙数などによって推定されたものとは思われるが、もともとIQというのは同一の「物差し」で測定した値(もしくはその寄せ集め)の相対比較にすぎず、真の天才の中味や個性を表現する手段としては妥当ではないと思う。まして、何人かの偉大な天才について、誰が200で誰が205であるとか、どっちがIQが高いなどといったランクづけの議論をするのは全く意味をなさない。あと、ミルとは全く関係ないが、「一芸に秀でた天才」は、総合的な指標としてのIQは、(仮に現行の知能検査を受けた場合は)概して低く傾向があるはずだ。

 不定期ながら次回に続く。