じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 大学構内の北西の端にある松の木が伐採された。このあたりには旧・日本軍第17師団の輜重兵第17大隊(工兵第10大隊のち同第10連隊)の頃に植えられたと思われる大きな松の木があったが、マツクイムシの被害が深刻となり、ほぼすべての樹木が姿を消した。



12月24日(木)

【ちょっと思ったこと】

年内の公務終了

 24日の夕刻に全学の某委員会に出席。25日(金)は振替休日、28日(月)は大学の一斉休業日に指定されたため、これをもって年内の公務はすべて終了した。もっとも、個人的な仕事は山ほど残っており、28日頃までは毎日「出勤」の予定である。

 今年の有給年次休暇はけっきょく26日分が未消化となった。翌年に繰り越しできない分は自動消滅となるが、大学教員の場合はだいたいそんなものだと思う。来月は、正月明けに振休をとったあとは、2月下旬まで、土日を含めて連続出勤となる見込み。

【思ったこと】
_91224(木)[心理]東北アジアの幸福観(4)日本の造形と自然観〜景の中の幸福をめぐって

 今回は、日本美術史の研究者による表記の話題提供について感想をのべさせていただく。

 話題提供者によれば、日本絵画は、小鳥のさえずり、せせらぎの音、蝉の声といった自然の音に満たされているという。その音は襖絵の中から聞こえてくるように感じることもあるし、開け放たれた縁の向こうの庭や池から実際に聞こえてくることもあるという。もともと日本の造形には「美術」や「絵画」といった概念はなく、建築と襖絵と庭とが有機的に連関して1つの理想的な世界を造り出し、そこに「自然の中に生きること」という日本独自の幸福観が確立しているというようなお話であり、大いに共鳴するところがあった。

 少々脱線するが、12月23日、NHKで、夢の聖地アフリカへ ジミー大西・絵描き修業の旅という番組をやっていた。ジミー大西さんは、岡本太郎から与えられた「キャンバスからはみだせ」という課題を追求しているそうだが、もしかすると、日本の伝統的な画法自体、襖絵が置かれた部屋や外の庭と有機的に連関しているという点で、すでに「襖=キャンバスからはみ出して」いるのかもしれないとふと思った。少なくとも、美術館内のコンクリートの壁に立てかけて鑑賞するようなものでは無かろう。また、屏風絵などの場合は、折った状態で鑑賞することを前提で制作されており、のっぺりと平面的に眺めたのでは本当の価値が分からないとも言われている。

 話題提供の中では、日本の伝統的な画法では、池の水面にはモノは映らないように描かれているというような話を伺ったが、なぜそうなのかということは聞き逃してしまった。また、滝の絵も描かれていないという(中国伝来の画法は除く)

 私自身は、以前より、園芸療法や森林セラピーといった人間・植物関係療法に関心を持っているが、最近は特に、東洋的な視点をどう取り入れ、どのような形で効果検証を進めていけばよいかという問題に取り組もうとしているところでもあり、今回の話題提供は大いに勉強になった。

2010.1.11.追記]NHKの「京都・南禅寺界隈 山紫水明のユートピア」という番組で、狩野元信の「大瀧図」を紹介していたが、あれは例外なのだろうか???
2010.1.17.さらに追記]その後、話題提供者から直接伺ったところでは、日本美術でも滝の絵はいっぱい描かれているとのことだ。当日言及されたのは、「西洋風の写実的な滝の絵」が日本の伝統的な絵画では見当たらないというような意味であったそうだ(←長谷川の記憶のため不確か)。

 不定期ながら次回に続く。