じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 ガーゲン先生ご夫妻講演会(↓参照)で熱弁をふるうメアリ・ガーゲン先生。後ろに座っておられるのがケネス・ガーゲン先生。肖像権の問題があるので、お顔の部分をぼかしてある。



10月12日(日)

【思ったこと】
_91012(日)[心理]ガーゲン先生ご夫妻講演会(1)

 社会構成主義で有名なガーゲン先生ご夫妻(Mary Gergen & Kenneth Gergen)の講演が立命館大学・衣笠キャンパスで行われた。ガーゲンの生出演の御講演は、私の個人的な受け止めで言えば、かつて、哲学者のカール・ポパーや行動分析学の創始者のB・F・スキナーの講演を拝聴した時と同じくらいの重要度をもつ、生涯トップレベルの機会であった。私と同じような人物は他にもたくさん居るのではないかと思い、満員になることを心配して早めに会場に到着してみたが、意外なことに参加者は少なく、ざっと数えて50〜60人規模にとどまっていた。ガーゲンの心理学界への影響はもっと大きいのではないかと思っていたが、私が思っているほどではないのかもしれない。

 もっとも、講演の案内文書によれば、今回のご講演前々日の10月10日、日本社会心理学会の大会でもガーゲンの特別講演が行われたということである。あるいは社会心理学会関係者はそちらのほうを聴きにいっていたのかもしれない。    ちなみに、私自身は、ガーゲンの社会構成主義の考え方については、(あくまで私が理解した限りでの見解ではあるが)、大ざっぱに言って60%くらいを肯定的に受け止めている。私がまだ納得していないのは、行動分析学への批判部分、とりわけ、言語行動についての位置づけである。今回の講演を拝聴してますます確信を強めたことであるが、ガーゲンの言語行動についての考え方は、スキナーの言語行動理論そのものではないだろうか。スキナーの言う強化理論は確かに機械主義的でガーゲンが最も嫌うべき側面かもしれないが、言語行動の定義や形成過程はまさにスキナーの言う通りではないかなあ。

 このほか、ガーゲン流の「心理療法」では、治療を施す側と受ける側という区別を排して一対一の協動関係を築くことを重視しているように受け止めているが(←あくまで私の解釈)、分業化が進んだ現代社会において、そのようにコストがかかる「療法」が定着するとはちょっと思えない。もちろん、精神疾患と呼ばれることの多くが、現代社会の言説と新たなビジネス開拓の循環の中で人為的に生み出されていっていることは事実ではある。

 次回に続く。