じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



10月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
§§  10月15日朝の農学部・農場と半田山。
前日に雨が降り、当日の早朝の気温が14.5度まで下がったこともあって、早朝は深い霧に包まれていた。撮影時の朝8時頃になってやっと霧が晴れる。農学部・農場(正式には「岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センター岡山農場」)では、名残のヒマワリのほか、正面には、幼稚園児などが訪れる芋掘り畑、その右手には黄色い菊の花、ずっと奥には稔った稲などが見えている。


10月14日(火)

【思ったこと】
_81014(火)[心理]日本心理学会第72回大会(18)超高齢者研究の現在(10)老年的超越(3)ライフサイクル、その完結

 今回は、当該のワークショップの話題から少々脱線するが、エリクソンの第9段階について、もう少し詳しく言及することにしたい。昨日も述べたが、エリクソンの「第九段階」の概要は

『ライフサイクル、その完結【増補版】』(ISBN 4-622-03967-2、2001年3月23日発行)

で知ることができる。手元にその本があるので、もう少し詳しく紹介させていただくと、

まず、この本(訳書)の増補版は、エリック・エリクソンとその妻のジョウン・エリクソンの共著という形をとっているが、増補版訳者あとがきによれば、エリック・エリクソンの『ライフサイクル、その完結』が出版されたのは1982年、彼が亡くなったのは1994年。そしてジョウン・エリクソンによって増補版が出版されたのはその3年後の1997年となっている。すなわち、増補、共著という形をとっているが、増補版のまえがきと、第5章「第九の段階」、第6章「老年期とコミュニティ」、第7章「老年的超越」は、すべて、ジョウン・エリクソンの執筆によるものであるということだ。ちなみに、翻訳者のほうも、初版の共訳者のうちのお一人は亡くなられており、増補版は、もう一人の方が、大学院生や卒業生との共同作業を経て完成されたと記されている。訳文は、全般的にぎこちなく固い表現のようにも見えるが、これはもともとのエリクソンの文章に原因があるらしい。周知のように、エリック・エリクソンはドイツのフランクフルト生まれで、母はユダヤ系デンマーク人、父親は不明とされており英語は母語ではない。訳者あとがき(増補版)にも記されているが、エリック・エリクソンの英語表現の背後には、妻のジョウンの大きな支えがあったということである。Amazonのカスタマーレビューでは、「ジョウンが記しているところは前半のエリクソンと雰囲気が違う語り口」、「基礎知識がないと難解、...専門用語以外でもカタカナ英語が多い...一般読者には、80-90歳代の高齢期の部分が知りたいという人にのみお勧め」といった意見が載せられていたが、私も同感である。訳書・本文はおおむね180ページであり、今回の話題の中心は、5章と6章(←但し、本文では「章」という文字は入っていない)ということになる。

 なお、エリクソンに限らず、一般論として、よく知られている発達段階諸説の中には、西欧文化中心的、あるいは男性原理中心的であると批判されているものがある。また、和田秀樹氏が『痛快!心理学』の中でも指摘しておられるように(69ページ)、エリクソンの「モラトリアム」の考え方は間違った形で応用され、自由放任主義を導いたとも言われている。


 次回に続く。