じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§  農学部農場の一角のコスモス畑が見頃となってきた。郊外各所にあるコスモスパーク等まで足を運ばなくても、毎日眺められるのでありがたい。



10月09日(木)

【思ったこと】
_81009(水)[心理]日本心理学会第72回大会(16)超高齢者研究の現在(8)心身の健康と長寿(2)

 昨日に続いて、エイジング・パラドックスの謎解きについて考えてみることにしたい。

 すでに何度か取り上げていることの繰り返しになるが、このパラドックスについては、まずそれが事実であることを確認した上で、さらに、「生き残り」の固定的な特性であるのか、それとも、個体内の経年変化であるのか、を精密に分析する必要がある。話題提供では、前者は「生き残りの効果」、後者は「エイジングの効果」と呼ばれていた。

 もし、「生き残りの効果」、つまり、もともとハッピーだった人だけが長生きしたことで超高齢者の平均値を上げているのであれば、同一人物の縦断的調査では初年度も5年後も同じ数値を維持するものと予想される。いっぽう「エイジングの効果」であった場合は、同一人物の中での数値上昇が予想される。今回報告された5年後フォローアップの結果では、
  • 男女差がある。超高齢女性では、身体機能と心理側面の両方の変化が大きく、幸福感の低下が顕著。
  • 主観的健康観は変化しない。
  • 「脱落者」の数値はもともと低い。
といった特徴が見られたということであった。ということで、「生き残りの効果」か「エイジングの効果」かについては、現時点では、はっきりした結論が出なかった。但し、男性では、どうやら「生き残り効果」、つまり、長寿者の特性が保持されるという傾向が高かった模様である。

 この話題提供ではもう1つ、「ランドマークエイジ」の可能性に言及されていた。ランドマークというのは、ここではおそらく「100歳達成」という意味で使われたものと思うが、ランドマークとして想定される効果にはおそらく、
  • 100歳になるまで頑張ろう
  • 100歳になったという達成感
  • 100歳を達成したことについての周辺あるいは自治体首長などからのお祝い
  • すでに多くの家族や知人と死別しているなかで、自分だけが長寿を維持できているという特別の感情
  • 都道府県、全国、全世界での最高齢保持者を目ざすというチャレンジ精神?
などがあるものと思う。もっとも、例えば調査対象者に「100歳になったという達成感はありますか?」と訊いて「はい」という回答があったら達成感の効果があったと証拠づけられるというほど単純なものではあるまい。「達成感」が効果をもたらしていることを実証するためには、そのお年寄りが日常生活のなかで「100歳達成」のことをどれだけ口にしているか、達成の前とあとでどういう行動変化があったのかを綿密に記録していかなければ真の実証には至らないであろう。


 次回に続く。