じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§  日本心理学会第72回大会に参加した時に撮影した北大構内の写真を、じゃらんのおでかけガイドに投稿した。これを機会に、北大の札幌キャンパスと岡大の津島キャンパスを同縮尺で比較してみた。それぞれの大学の資料によれば、北大の札幌キャンパスの面積は177万6248平米で、岡大・津島キャンパスの63万5308平米の約3倍の広さとなっている。しかし、岡大津島キャンパスの北側には、岡大・半田山自然教育研究林があり、この面積は67万5912平米。合わせると131万0500平米となり、この半田山の風景がキャンパスから見渡せることで広々とした印象を与えている。なお、北大では医学部、歯学部、付属病院も同一キャンパスにあるが、岡大は津島キャンパスとは離れた鹿田キャンパス(13万5327)のほうにあり、病院利用者が津島キャンパスを訪れることはない。



10月04日(土)

【思ったこと】
_81004(土)[心理]日本心理学会第72回大会(11)超高齢者研究の現在(3)百寿者の現状と生きがい

 昨日の続き。

 超高齢者というと、長いヒゲを生やした仙人のようなおじいさんを思い浮かべる人もいるかもしれないが、大多数は女性であり、夫に先立たれて独り暮らしをしていることが多い。また大多数は過去数年以内に入院経験をもち、最後は病院または高齢者施設で1人で死亡するという社会的側面を持っているという。昨日も述べたように、行動観察のレベルでは、超高齢者では慢性的な生活機能低下や認知機能、アイデンティティの喪失が進む傾向にある。

 こうした高齢者に対しては、「負の提言」という見方もあるという。

 その1つは「トリアージ(trierge)」と称される。いっぱんにトリアージというと、大規模災害時の治療や搬送の優先順位を思い浮かべてしまうが、ここでは「高齢者は治療を若い世代に譲るべきか」、「高齢者は生きる権利を若い世代に譲るべきか」といった意味に使われる。

 もう1つは「死の義務(duty to die)」と称されるもので、「若い世代に譲るために、高齢者は死すべき義務がある」といった意味に使われる。これは1984年、米国のコロラド州知事リチャード・ラムが「人生の黄昏時ともなれば、年少者に居場所を明け渡すのが道徳的な義務である。秋には木の葉が落ちるように、高齢者には死ぬ義務がある」とし提唱したことが始まりであるとされており、高齢者向けの医療費削減、脳死臓器移植、尊厳死、介護の共依存などにも関わってくるようだ。




 では、実際、百寿者の実態はどうなっているのだろうか。話題提供によれば、昭和40年時点での百歳以上の高齢者は全国で、男性36人、女性162人、合計で198人にすぎなかったが、平成17年には、男性3779人、女性21775人、合計で25554人に上っているという。そう言えば、NHKで「百歳バンザイ!」という番組があるが、100歳以上の方が2万5000人以上ともなると、1年以内にその番組に登場できる確率は50/25000=0.0008、そう簡単には出演できそうにもない。

 このほか、西暦2300年の日本人の平均寿命は、男性104歳、女性108歳になっているという国連レポート(2004年)もあるという。この情報は2006年7月28日の毎日新聞記事で紹介されたらしいが、出典を辿ることはできなかった。

 百寿者の日常生活環境については興味深いデータが紹介された。百寿者を「寝たきり(bedridden)」、「ある程度の介護・介助を要する(need some help)」、「自立(independent)」にカテゴリー分けして1973年と2000年で比較した場合、寝たきりの百寿者が24.1%から50.5%に増加している反面、自立者のほうも10.8%から19.3%に増えており、二極化が目立っているという点であった。

 この原因についてはよく分からない。寝たきりの百寿者が増加している一因は医療技術の進歩にあり、例えば、余命幾ばくもない99歳11カ月の寝たきりの超高齢者がおられた場合は、家族の多くはあらゆる延命治療をほどこして何とかして百寿者を達成させてあげたいと思うかもしれない。但し、その場合は、100歳ぴったりのあたりで死亡年齢のピークの1つができるはずだが、そういう根拠が実際にあるかどうかは不明である。




 最後に、超高齢者におけるSuccesful Agingに代わるアイデアとして、
  • 自立から自律へ(自己決定の重要性)
  • 他者への基本的信頼感を高める(Erikson, E. H. & Erikson, J.M.の第9段階)
    日本的な相互依存的人間関係
  • ハッピー・エイジング
    肯定的気分の維持
が提言された、いずれももっともなことだと思う。なお、エリクソンの第九段階については、

『ライフサイクル、その完結』ISBN 4-622-03967-2

という書籍が刊行されている。このほか、仏教的な見方も大いに参考になると思う。

 次回に続く。