じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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岡山大学構内でお花見(55)アベリアと黄葉

 園芸品種名としてのアベリアは、ハナツクバネウツギあるいはハナゾノツクバネウツギとも呼ばれる低木で、花期が春〜秋のかなり長期にわたるため生け垣によく使われる。

 そろそろ黄葉が始まったケヤキやイチョウとのコントラストが美しい。


9月29日(月)

【思ったこと】
_80929(月)[心理]日本心理学会第72回大会(7)乱数生成課題研究の応用的展開に向けて(7)Mentalizing容量と音調テスト

 3番目は三浦氏、板垣氏、丹羽氏連名による、

●Mentalizing容量と音調テスト

という話題提供であった。この方面の研究は私にとっては全く未知の世界であり大いに勉強になった。

 三浦氏はまず、ToM(セオリー・オブ・マインド)能力に関して、Bora et al. (2006)を引用し、音声課題(音調テスト?)、相手が表出する心的状態を把握する課題(Mind state decording task)、場面や状況から相手の心的状態を帰属させる課題(Mind state reasoning task)という3者の関係について言及された。そして、今回は、その発展として、

乱数生成課題指標値と音調テスト得点の相関関係を調べ、Mentalizing容量とToM能力の関係について考察する

という大がかりなテーマを掲げておられた。対人場面において相手の気持ちを察するにあたって、相手の喋り方、顔の表情、場面や状況が基本的な手がかりになるという点まではよく理解できたのだが、うーむ、なぜここから、乱数生成課題が出てくるのかイマイチ分からないところがあった。乱数生成課題を遂行させた時に、その指標値の1つDRFAは長期記憶から外界に対応する表象を選んで内在化させることで作られる記憶容量を反映しており、これがMentalizing容量(表象を保持するスペース)と近い関係にある、よって、DRFAを調べればToM能力の推定に役立つ可能性があり、乱数生成課題の応用的展開に役立つというようなお話であったと理解したが、それでよかったのだろうか。

 でもって実際の結果だが、音調テスト得点とRNG指標値との間には有意な相関は見られなかったという。そして、さらに性差の検討にはいり、乱数生成課題における認知機能状態を把握することがToM研究において有用であるというように結論されていた。

 話題提供の後半では、アスペルガー障害・統合失調症のToM障害は、Mentalizing容量の問題が論じられたが、指定討論者にの若林氏からも御指摘があったように、健常者の個人差を説明するモデルと病理モデルとのアナログには飛躍やこじつけといった危険が伴うように思った。

 若林氏からは、他の話題提供を含めて以下のような御指摘があった。あくまで私が理解できた範囲であるが、それぞれまことにごもっともな御指摘であると思った。以下は、私の理解した範囲でまとめたメモ(若林氏ご自身のお言葉ではなく、私自身の言葉で翻訳・解釈したような内容であり、的外れになっているかもしれない点をお断りしておく)。
  • 乱数生成課題において、なぜワーキングメモリのモデル化が必要なのか?
  • 乱数生成課題は退屈であり、動機づけの差が出るのでは?
  • 健常者の個人差は難しい。乱数生成を課題として設定してしまうと測れなくなる。
  • 一般論として、何かのテスト(作業検査)を作ってしまうとそれで個体差は見つかるが、それによって、日常場面で実際に生起する特徴的な行動を説明することはできない(←この部分は、長谷川の解釈をかなり含む)。
  • 性差の原因は、羊水中のテストステロンの差にある
  • 男女と、SタイプとEタイプ(SQ/EQ)との組み合わせの4通りにおいて、不一致群の特徴を見ることが重要であるが、私立大の大学生を被験者とした場合、どうしても、理工系には男子、文系に女子が偏りやすく、Sタイプが得られにくいため、サンプルを集めて比較することが難しい)。


 次回に続く。