じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 学会2日目の日程終了後、せっかくだからポプラ並木を見に行こうと、会場(旧・教養部エリア)から西の方角に歩いてみたが、農場エリアが立ち入り禁止になっていて、結局たどりつけなかった。写真は、そのかわりに偶然行き着いた「平成ポプラ並木」。なお、ここから工学部エリアを通って正門方向に向かおうとしたが、工事中立ち入り禁止区域などあり、何度も引き返した。さすが北大は広い。

9/21追記] 3日目の早朝に、元祖ポプラ並木のほうも見物できた(写真右)。しかし、立ち入りできるエリアから眺める限りでは、葉っぱが茂りすぎていて、並木の奥の方まで見通すことができなかった。


9月19日(金)

【思ったこと】
_80919(金)[心理]日本心理学会第72回大会(1)久しぶりの北海道/乱数生成課題研究の応用的展開に向けて(1)

 2008年9月19日から北海道大学高等教育機能開発総合センターで開催されている日本心理学会第72回大会に参加した。会場となった「高等教育機能開発総合センター」というのは、どうやら旧・教養部の施設であり、岡大で言えば「一般教育棟」に相当するようであった。

 北海道と言えば、学生時代には何度も旅行したことがあり、合計滞在日数は100日を超えている。季節のほうも、10月と11月を除いて1度以上は訪れたことがあるのだが、ここ10年ほどはすっかりご無沙汰していた。1998年春に、家族全員でツアーに参加したのが最後であったと思う。ただしその時は、最後の夜に札幌のホテルに泊まって翌朝には空港に向かっただけで、札幌市内観光はしていない。

 さて、今回も例によって、講演、シンポジウム、ワークショップなどの参加感想を連載しようと思う。昨年度の大会の時の感想文は、連載60回、400字詰め215枚という「大作」となったが、今回はもう少し少なめ。毎日の企画の中からそれぞれから2件ずつ、3日間合計で6件の企画に限って感想を述べることにしたい。




 まず1番目に、1日目の午後に行われた、

乱数生成課題研究の応用的展開に向けて 19日 13:00-15:00
  • 企画 亜細亜大 板垣文彦
  • 企画 Aberdeen大学 Turk David
  • 企画 福島県立医大 丹羽真一
  • 企画 東京大 伊藤憲治
  • 司会 福島県立医大 丹羽真一
  • 話題提供 亜細亜大 板垣文彦
  • 話題提供 日本大 吉田宏之
  • 話題提供 福島県立医大 三浦恵
  • 話題提供 東京大 伊藤憲治
  • 指定討論 千葉大 若林明雄
  • 指定討論 京都大 苧阪直行【当日ご都合によりご欠席】
というワークショップから取り上げさせていただく(敬称略)。

 さて、この乱数生成課題であるが、私自身がこのことに最初に興味を持ったのは、日本心理学会の年次大会に初めて参加した学部3回生の時であった。このときは37回大会であったから35年も前のことになる。その中の口頭発表(当時は、すべての個人発表は口頭発表で行われた。発表論文集は大部分が手書き原稿のオフセット印刷)。その時、松田先生(旧姓、国武先生)のご発表を通じて、初めて、乱数生成の研究があることを知った
]その時の松田先生のご発表内容は、その後、刊行された、
Matsuda, K. (1973). Creative thinking and random number generation test. Japanese Psychological Research, 15, 101-108.
で拝読することができる。

 さて、その後、私自身は、乱数生成行動を選択行動の変動性と関連づけて、いくつかの実験研究を行ってきた。その概要は、

スキナー以後の行動分析学(17)乱数生成行動の研究が目ざしたもの岡山大学文学部紀要, 46, 1-18.

および、

乱数生成行動と行動変動性:50年を超える研究の流れと今後の展望. 行動分析学研究, 22(2), 164-173.

にまとめてあるので、ご高覧いただければ幸いである。

 さて、今回のワークショップの企画者の板垣氏のご研究内容はずっと以前(たぶん20年以上前)から存じ上げていたが、最近はすっかりご無沙汰してしまっていた。これは、私自身が怠け者であったという点に加えて、乱数生成課題研究の方向性に関して、以下のような相違があったためではないかと考えている。
  1. 言語的教示の有効性?
    そもそも、心理学の実験において、「なるべく速く、なるべくでたらめに0〜9(あるいは1〜10)の数字を言ってください」というような教示は有効と言えるのか?

  2. 動機づけの必要性?
    「乱数生成」という退屈な課題に対して被験者が「投げやり」に振る舞うことはないのか?

  3. 学習による変容の可能性
    被験者が生成する「乱数」列のランダムネスは、訓練や経験によって変容するのではないか? それゆえ、ランダムネスの質的差違は必ずしも当人の性格(特性)を反映するとは言えないのではないか?

  4. 他の選択行動との関連づけ
    「乱数生成課題」は人間固有の行動なのか? 例えば、動物がランダムに隠れ場所を変えたり、T型迷路の左右の選択をランダムに変えたりする行動と共通性は無いのだろうか?
 特にクリティカルと考えられるのは、やはり1.に関わる問題であろう。ここで私は、言語的教示一般が無効だと言っているのではない。例えば「0〜9の数字をその順番に言ってください」という教示は、幼児でも十分に有効であろう。しかし、「なるべくでたらめに」というのは、「でたらめ」という言葉の意味を理解していない被験者にとっては無効である。当然、人間以外の動物を被験体とした研究とは共通性を持たない。「でたらめ」とは何かについて十分な知識を持たない幼児はもちろん、障がいのある人たち、あるいは認知症のお年寄りにご協力いただくこともできない。このこともあって、私自身は、研究を初めたかなり早い時期から「なるべく速く、なるべくでたらめに0〜9(あるいは1〜10)の数字を言ってください」という言語的教示を前提としない方向に研究を進めていった。

 次回に続く。