じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 12月15日(土)の夜は、ときおり雪雲がかかったもののよく晴れ、地平線近くに沈む月齢5.8の月を眺めることができた。写真上は、農学部農場、下の2枚は、農学部の田んぼから留学生会館方向。

 なお、この夜はアンドロメダ銀河はよく見えていたが、ホームズ彗星のほうは双眼鏡で確認することはできなかった。いよいよ見納めか。



12月15日(土)

【思ったこと】
_71215(土)[心理]学士教育課程のコンセプト(9)「クリッカー」の威力(4)

 今回の演者の方は「社会的認知構成主義学習理論」に依拠して、クリッカーの教育効果を説明されておられたようであったが、私個人としては、むしろ、行動分析学的視点でとらえたほうが発展性が出てくるし、さらなる授業改善のための建設的な提言ができるように思えた。

 まず、演者の方は、知識と学習の違いに関連して、
教えることとは、知識の一方的な伝達ではない。既成の知識体系を学生自身が変革しながら能動的に吸収する必要がある。しかし、通常の講義で自ら考えることができる学生は少ない。
と論じられた【スライド画面の文章を長谷川が一部改変】。この部分については私も大いに賛成できる。但し、クリッカーを活用するだけで、「既成の知識体系を学生自身が変革しながら能動的に吸収」できるようになるかどうかは、何とも言えない。もちろん、その成否は第一義的には教員の腕次第であるが、この方法ばかりに頼らず、例えば、講義の中でもグループ発表を取り入れるとか、小テストや小リポートをこまめに出すといった工夫が必要ではないかと思う。




 さて、ここでもう一度、クリッカーの典型的な活用事例について考えてみよう。
  • 例えば某授業の最中、「ウォンバット(こちらに写真あり)は次のどの仲間でしょうか?」というクイズを出したとする。
  • 受講生は、以下の四択からどれかを選んで、制限時間内にボタンを押す。
    1. ブタの仲間
    2. フクロネズミの仲間
    3. コウモリの仲間
    4. ぬいぐるみの仲間
  • 受講生が1.〜4.のどれを選んだのか、選択比率が瞬時にグラフで表示される。
  • 教員は、正解率の高低に配慮しながら、ウォンバットがどういう動物であるのか解説する。
 このクイズを能動的学習に活用するためには、受講生の解答行動は何らかの形で強化されなければならない。おそらく、
  • まずは、自分がそれまで持ち合わせていた動物学の知識を思い起こし、
  • 次にウォンバットの特徴を調べて参照する。
  • その上で、最も妥当と思われる2.を選ぶ。
  • 選択比率が図示され、自分と同じ選択肢を選んだ受講生がどのくらいいるのかを知る。
  • 教員から正解は2.であると告げられる。正解を出したことで、自分の思考・判断は強化される。
というプロセスを辿ることになると思うのだが、これはあくまで、クイズに真摯に取り組む学生に限っての話である。中には、「受け狙い」で4.を選ぶ学生もいるかもしれないし、殆ど何も考えず、どのようなクイズが出されても常に1.ばかりを選ぶ学生も出てくるかもしれない。ま、授業をどう盛り上げるか、というのは結局は「教員の腕次第」というになるのだろう。

 なお、ここで、選択比率を図示することがどういう強化になっているのかは、もう少し検討の余地がある。単に、自分の解答が正解であったかどうかが強化になるのであれば、他の受講生の行動や、全受講生の中での自分のレベルなどは大した関心事ではないはずだ。もっとも、正解不正解のフィードバックをするだけなら、スキナーがかつて創始したプログラム学習や、いま流行の個別学習型のe-Leraningでも事足りるはず。講義であるからには、みんなが一斉に同じことにとりくんでいるという臨場感を演出する必要があり、そういう意味では選択比率の瞬時フィードバックにもそれなりの意義があるのかもしれない。

 ということでいろいろ書いてはみたが、安価で手に入るのであれば、私も自分の授業で使ってみたいとは思っている。

 次回に続く。