じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]

 高松駅地下のレンタサイクル置き場(5月27日撮影)。こちらの案内にある通り、丸一日利用しても料金はわずか100円。市内の移動には大変便利。

 高松市でこのような大規模なレンタサイクル事業が展開している経緯についてはよく分からないが、宇高連絡船跡地が有効活用できたこと、比較的温暖で晴天率が高いので自転車を利用しやすいことなどが追い風になっているものと思われる。
 ちなみにこちらの情報にあるように、岡山駅でもレンタサイクル事業は展開されているが、一時利用は割高である上、繁華街周辺では迷惑駐輪のほうが問題になっている。バス会社も多いので、岡山駅周辺での利用推進には限界があるかも。



                      

5月30日(水)

【思ったこと】
_70530(水)[教育]第55回中国・四国地区大学教育研究会(3)「ディシプリンから」と「課題から」

 昨日の続き。

 川口氏のご講演に続いて、寺崎昌男氏による

●学士課程教育の課題と教養教育〜FD義務化を目前にして考える〜

という講演が行われた。寺崎氏のご講演は、3月の大学教育研究フォーラム(こちらを参照)でも拝聴したばかりであり、内容が共通していたこともあってよく理解できた。

 講演ではまず、大綱化以降の学士課程教育の意味、「学士」が学位として位置づけられ、また、呼称が単純化され分野・領域がカッコ内に入れられるようになったこと(例えば、「文学士」ではなく「学士(文学)」)、そのあり方をめぐって9月までに全体的な改革のプランが打ち出される見込みであることなどに言及された。

 3月のご講演の時と同様、寺崎氏は、従来の学部づくりの原理が「ディシプリンから」であったのに対して、最近では「課題から」作られる新しい学部増えている点を強調された。じっさい、文科省『全国大学一覧』平成18年度版によれば、最近10年間に登場した学部名称の中には、例えば、「ライフデザイン学部」、「ヒューマン・ケア学部」、「社会イノベーション学部」、「ホスピタリティー・ツーリズム学部」、「グローバル・メディア・スタディーズ学部」というように、ちょっと見ただけでは、どういう学問の集合なのかよく分からない名称がある。←「ホスピタリティー・トレッキング学部」が創られるなら私も参加したいなあ。

 この「課題から学部を創る」という潮流については、その意義は十分理解できるのだが、全国の大学がいっせいに呼称を変更したというわけではない。その背景にはやはり、歴史ある既存学部との違いをアピールして受験生を獲得する必要もあったのではないかと思う。

 また、いくら「課題があるから学ぶ」と言っても、基礎から高度な内容への体系的な積み重ねは不可欠であろう。例えば、いくら「いじめ解消」が重要な課題であるからと言って、「いじめ解消学部」を創ればいいというものではなかろう。また、何かの課題を質問紙調査で調べると言ったところで、統計解析の基本を身につけていなければ、平均値や比率の違いをグラフで示すことくらいしかできない。新奇な呼称はどうあれ、学部の基本はディシプリンにあり、問題は、その中味を固定しないこと(例えば同じ「心理学」でも中味は時代とともに変わっていく)、ディシプリンをどう総合していくかということにあるのではないか、というように私は思う。

 なお、論点は少し異なるが、「スペシャリスト養成か、ジェネラリスト養成か」、あるいは学際性をどうとらえるか、ということもしばしば議論される。これに関しては2004年6月13日の日記で述べた
  • Generalistを目指すのではなく、他分野の人と協調して共同作業できるSpecialistを目指す
  • 例えば3人のGeneralistsを養成しても役に立たない、3人の高水準のSpecialistsを養成すればこそ、つまり、「学際」・「協調」・「分業」を前提とするからこそ、他の分野をパートナーに任せ、自身は専門に集中できる
という坂村健氏の御指摘が記憶に残っている。ま、その時に言われたスペシャリストというのは、大学院レベルの研究者養成に関する話なので、学部教育レベルにはそのまま当てはまるわけではないが。




 もっとも、学部新設や呼称における「ディシプリンから」か「課題から」かという議論と、教養科目のあり方が「ディシプリンからか、課題からか」という議論は必ずしも結びつかない。。

 次回に続く。