じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
「落ちないイチョウ」に沈む夕日。「落ちない」と言いつつ、12月18日撮影時に比べてさらに葉を落とし、もはや他の樹と区別がつかなくなった。枝にはすでに来春の芽が見えている。



12月23日(土)

【ちょっと思ったこと】

赤いぼうし、正十二面体と正二十面体

 朝日新聞「ニッポン人・脈・記」で「数学するヒトビト」という連載があり、毎回興味深く拝見している。少し前になるが、12月19日の連載6では、安野光雅氏(80)、森毅氏(78)、野崎昭弘氏(70)が登場しておられた

 記事の中では、野崎と安野の絵本『赤いぼうし』(童話屋)が取り上げられていた。私自身はこれを読んだことが無いが、いわゆる「帽子問題」であれば、このWeb日記を執筆開始して間もない1997年7月23日の日記で独自に考察したことがある(関連記事が2000年7月28日の日記にもあり)。

 もう1つ、冒頭で

●正十二面体と正二十面体とはどちらの体積がより球に近いか。

という森毅氏出題のクイズが引用されていた。上記の問題だけでは「体積が球に近い」という意味がイマイチ不明なのだが、どうやら、

●これらの立体に外接する球を考えた時、球の体積に近い体積をもつのはどちらの立体か?

という意味のようだ。記事には「正十二面体のほうが球に近いこと」、またヒントとして、頂点の数が、正十二面体は20個、正二十面体は12個で、十二面体のほうが多いことが挙げられていた。

 若いときならこういう問題があるととにかく自力で解こうと頑張ってみたものだが、いまはそういう気力も無い。ウィキペディアで調べたところ、

正十二面体
  • 空間を正五角形12枚で囲んだ凸多面体。
  • 辺30本、頂点20個からなる。
  • 向かい合う面は平行である。
  • 正二十面体とは双対の関係にある。
  • 表面積S、体積>Vは、一辺をaとすれば
また、
正二十面体
  • 空間を正三角形20枚で囲んだ凸多面体。3次元空間で最大の面数を持つ正多面体である。
  • 辺30本、頂点12個からなる。
  • 向かい合う面は平行である。
  • 正十二面体とは双対の関係にある。
  • 表面積S、体積>Vは、一辺をaとすれば
となっていた。但し、ここに挙げた数式のaが同じ値であるとは限らないので、数式だけから体積の大きさを比較することはできないようだ。

 そういえば、高校生の頃、こういう問題に夢中になっていたことがあった。定年後にヒマができたらまた取り組んでみたいと思っていたが、気力の衰えのほうが先に来てしまいそうだ。




 ところで元の

●正十二面体と正二十面体とはどちらの体積がより球に近いか。

という問題だが、これを面白いと感じさせるのは「二十面体のほうが十二面体より面の数が多いので、何となく球に近いように思える」という直観を覆す意外性があるからに他ならない。

 しかし、「十二面体」とか「二十面体」というのは、単に、ある立体を面の数で区分したの呼称であって、呼び方を変えればそれほど意外ではないようにも思える。

 そもそも、直線で構成される平面図形だって、「四辺形」というように辺の数で呼ぶこともあれば、「三角形」、「四角形」というように頂点の数で区別することもある。ならば、「正十二面体」の代わりに「正二十角体」、「正二十面体」の代わりに「正十二角体」と呼んでもよいはずで(←あっ、これを双対と呼ぶのであった)、角の数で同じ質問をしたら、たぶん、「正二十角体」つまり「正十二面体」のほうが球に近いと答える人の方が多いのではないかと思う。

 ま、それはそれとして、種々の数学論議のなかでも、規則性のある立体や平面図形というのは身の回りの世界にも多数存在しているだけに、何か、自然界の神秘を解いているという気分になってくるところがワクワクしてくる。立体ではなく平面図形で言えばウユニ湖(アルバムインデックスはこちら)の湖面全体に出現する多角形なんぞも、辺の数は不揃いだがほぼ同じ面積で隙間無く並ぶというところがまことに興味深い。