じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
大学構内には猫の縄張りがいくつかある。写真はその中でも最も古株となったグループ。2004年5月22日の写真2004年7月26日の写真などに写っていることから、少なくとも3歳以上。3度目の冬を迎えることになる。なお同じ場所に棲息していた4匹は猫好きの方たちに引き取られたと聞いている。


12月16日(土)

【思ったこと】
_61216(土)[一般]ワーキングプア再考(1)

 少し前になるが、12月10日(日)の21:15〜22:30にNHKスペシャル「ワーキングプアII努力すれば抜け出せますか」という番組があり、DVDに録画しておいたものを土曜日にざっと拝見した。この放送は、7月23日に放送された「ワーキングプア〜働いても働いても豊かになれない〜」に対してたくさんの反響があったことから、寄せられた手紙に基づいて新たな取材を行ったものであるという。但し私は7月23日放送分は拝見していない。

 この番組を視ようと思ったきっかけは、ネット紹介記事や番組紹介サイトの中で
  • まじめに働いても努力が報われず、生活保護水準以下の暮らしを強いられている"ワーキング・プア"の問題を考える第2弾。
  • 働いても働いても豊かになれない
という事態がどうして起こるのか、なぜいまの福祉政策では救うことができないのかを知りたかったためである。

 番組では冒頭に
1年間の利益が24万円しかない秋田の仕立屋の男性、東京池袋でゴミ箱から拾った雑誌を売って暮らしている若者、...働いても働いても豊かになれない、生活保護水準以下の生活を強いられる人々の厳しい現実
という7月23日番組で伝えられた現実と、1400件を越える手紙やメイルが寄せられたことが伝えられた。7月23日放送の番組を視ていなかった私でも、えっ?そんなことがあるの?と驚かされるナレーションであった。

 また今回の番組の最後は、専門家3氏のコメントに続いて鎌田キャスターの
これ以上の自助努力を求められるでしょうか...問題を先送りすることはできません。このままでは若い世代の人たちが未来への夢や希望を持てない社会になってしまうからです。競争社会をこのまま突き進むのか、それとも別の社会をめざすのか。ワーキングプアの問題は私たち一人一人にまさにその選択を迫っているのです。
ということばで結ばれていた。




 ワーキングプアの状態に陥ってしまった人たちが自助努力だけで抜け出せない現実はよく分かるし、また、その責任が彼ら自身にあるとは思えないが、今回紹介された事例をもって、「競争社会をこのまま突き進むのか、それとも別の社会をめざすのか。ワーキングプアの問題は私たち一人一人にまさにその選択を迫っているのです。」と言われると、うーむそうかなあ、もう少し別の選択肢もあるのではないかなあとというのが率直な感想である。

 まず、この種の問題を考えるにあたっては、紹介された人々の事例の固有の部分と、一般化できる部分を分けて考えてみる必要がある。固有の部分に非常に特殊な事情があるならば、それらは特例措置として救済すればいい。政策や将来構想の変更を迫るのであれば、まずは一般性のある問題を見つけ出す必要があるし、また、ある政策を実施するにあたってのメリットとデメリット、さらにはその対案が実施された場合のメリットとデメリットを総合的に考慮しなければならない。ある政策のマイナス面だけをセンセーショナルに取り上げても根本解決には至らないのである。

 それと、一般性を持たせるにあたっては、
  1. そういう事態がなぜ起こったのか。それを防ぐ手だてをどうするか。
  2. 起こってしまっている事態にどう対処するか。
という両面から検討する必要がある。今回の問題は2.の現実を取り上げていたわけだが、例えば、なぜ彼らが年金を受け取れない状態になってしまったのか、生活保護を受けられない事情にあるのかということは別に考える必要がある。むしろそちらのほうが、同種の問題の再発を防ぐ上で有効な手だてとなるだろう。それと、これはプライバシーの問題が関わるので報道は難しいと思うが、最初に紹介された2つの事例はいずれも、離婚が発端となっていた。結婚や離婚というのは当事者が好き勝手にできるという性質のものでは必ずしもない。やむを得ず離婚した場合でも慰謝料や養育費をどうするかという対応があるはず。このあたりも次回以降に考えてみたいと思う。