じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
座主川(旭川からの用水)沿いで見かけたミカンの木。瀬戸内地方では全般にミカンが不作だと言われているが、この木はちゃんと実をつけているようだ。


12月6日(水)

【ちょっと思ったこと】

EVDとDVDのVとは?

 12月7日のモーサテで、EVDの話題を取り上げていた。何の略かと思ってネットで調べたら「Eenhanced Versatile Disc」。このことで初めて知ったのだが、ウィキペディアによればDVDは「Digital Versatile Disc(デジタル多用途ディスク)」にちなんだ正式名称とのことである。これまで「DVD」の「V」は「Video」の略だと思っていたがそうではなかった。言われてみれば、DVDはデータディスクとしても使える。ビデオモードばかりではない。

【思ったこと】
_61206(水)[心理]日本心理学会第70回大会(12)その安全対策は有効ですか?(4)運転適性検査は妥当か?(1)

 日本心理学会第70回大会シンポジウム:

●その安全対策は有効ですか? 〜心理学の視点で考える交通・産業・医療のヒューマンエラー・違反の防止策〜

の感想の4回目。2番目はS氏による

●鉄道における事故防止策としての運転適性検査の研究

という話題提供であった。

 この内容は、今回のシンポの話題提供・指定討論の中では異色であるように私は思えた。というのは、他ではもっぱら、

ある人(「Aさん」としておく)がある現場で安全行動を維持するためにはどういう対策を講じるとよいか。

という内容であったのに対し、ここで取り上げられ「適性検査」というのは、要するに

Aさんをその任務に就かせることは適当であるかどうか

を「鑑別」するツールを作るということである。この前提には、

安全維持には適性がある。適格と判断された人に任せれば安全だが、不適格な人はどうやっても改善できない。不適格な人はその職務から排除しなければならない。

というタイプ分けの論理が含まれているように思える。

 確かに、航空機のパイロットや、電車・バスの運転士のような場合、万が一事故を起こせば多数の人の命が奪われるわけだから、適性を重視することはどうしても必要になってくる。少なくとも、繰り返しミスをおかすような人は職務から外すべきであろう。

 しかし、いま述べたことは、適性があるかないかというタイプが明確に分かれており、それらを区別する方法に信頼性、確実性があることが大前提となる。もし、あやふやな適性検査などで人を「鑑別」してしまうようなことがあれば、結果的に
  1. 「不適性」と判定することで、本当は適性があるという人を排除してしまうという危険
  2. 本当は不適性な人を「適性」と判定して、職務に就かせてしまうという危険
を引き起こす恐れがある。このうち1.は、子どもの頃からパイロットや運転士になるために努力してきた人たちの夢を、1枚のエエ加減な検査で打ち砕いてしまうことにも繋がりかねない。また2.は、事故の防止策としての有効性が疑われることになる。




 では、実際の適性検査はどうだろうか。実際には、動力車の運転適性検査というのは、運輸省令(←当時の呼称)や国鉄技第164号(課長通達)で、実施することが義務づけられているのだそうだ。具体的には、クレペリン検査(並んでいる数字を足して1の位を書き込む検査)や反応速度検査、注意配分検査などから各職種に応じて勘案された検査を3年に1回以上行うことになっているという。

 S氏が示した統計資料(例えば、小堀, 1991)によれば、各種運転適性検査の各種スコアの平均値を比較すると、確かに「無事故者より事故者のほうが運転適性検査の成績が低い」という傾向が見られている。もっともこれは、私にはかなり僅差であるように思えた。例えば、S氏のスライドの中の棒グラフで、クレペリン検査の合格者と不合格者を、母集団全体(10万9888人)と、事故者集団(208人)に分けて比較すると、「合格者群のうち事故者の比率は低い」、「不合格者のうち事故者の比率は高い」という傾向は確かに見られるが(竹内・岩下, 1975)、いくら統計的に有意差があるといっても差の程度はわずか。この検査の合格者を職務に就かせ、不合格者を別の職種に移動させたとしても、事故を防止する効果があるとは到底思えなかった。

 S氏自身もこの現状は、問題点として受け止めておられるようであった、そして、現行の運転適性検査には
  • 基準関連妥当性がない。→事故数は極端に少なく、事故数を基準とした妥当性評価には限界がある。
  • 内容的妥当性に問題がある。→そもそも運転適性検査は何を測っているのか。各検査が運転の何と対応しているのかが曖昧である。
という問題点を指摘された。ということで、新しい運転検査の方向性が提唱されることになるわけだが、時間が無くなったので次回に続く。