じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
座主川(大学構内を流れる用水)沿いの黄葉。写真には写っていないが、強風で落ち葉が舞っていた。


11月7日(火)

【ちょっと思ったこと】

水星の太陽面通過

 11月9日朝に、水星の太陽面通過(日面通過)という珍しい現象が見られる。アストロアーツの記事によれば、水星が太陽面の中心に最も近づくのは、6時42分頃。水星が太陽面に内側から接する「第3接触」は9時9分頃、太陽面から完全に出終わる「第4接触」は9時10分頃となっている。

 太陽に比べると水星はきわめて小さく、小さな黒点程度にしか見えない。肉眼では絶対無理。望遠鏡で覗いたらそれこそ眼を焼かれてしまう。じっさいは、三脚で小型望遠鏡を固定し、白い紙に太陽を投影して眺めることになる。要するに、太陽の明るい円の中に黒い点を見つけるだけのことだ。

 見た目には大したことないとはいえ、この現象が次に日本国内で見られるのは、26年後の2032年11月13日であるという。26年後となると、私の場合は80歳。そこまで生きていられるかどうかは微妙だ。岡山では幸い晴天が予想されているので、芥子粒のような黒い点をこの眼で見ておくことにしよう。

【思ったこと】
_61107(火)[心理]日本心理学会第70回大会(5)心理学界が目指すべき資格制度のあり方(3)医行為とは何か


●心理学界が目指すべき資格制度のあり方〜心理職の国資格化をめぐって〜

の感想の3回目。

 臨床心理士の国資格化を目ざしている方々のお一人、T氏の話題提供では重要な論点が2つほど示された。

 その1つは、心理職が病院内で仕事をすることが、医行為にあたるかという点である。

 こちらのA(マル2)の2.に
2 医療保健領域では現行の医事法制に則った資質の規定と位置付けが基本となります。 傷病者を対象として診療の一部を担っているにもかかわらず、国家資格がないために、人体に及ぼす危険性についての責任が不明確な現状が続いています。
と記されているように、医療心理師の国資格化を推進する立場の方々は、医事法制に則った資質の規定と位置づけを明確にする必要を説いておられる。これに対してT氏は「医行為の範囲はもっと限定的なものである」と指摘された。

 じっさい、「医行為とは」というキーワードで検索をかけてみると、
医行為の概念及び範囲は一般社会通念による外はないが、「医行為とは医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危険を及ぼすおそれのある行為である」というのが一般的に認められている定義である。
などと解説されている(出典はこちら)。

 要するに、一般の人がそれを行うと傷害罪などの犯罪として罰せられるが、医師が治療目的に行う場合に限ってはそれが認められる行為のことを医行為と呼ぶというのである。確かに、心理職が一般に行う行為は、傷害行為(傷害が予見されるような行為を含む)には当たらない。その意味では医行為とは呼べない。




 しかし、上記の定義にもとづいて、個別的な行為ごとに医行為かどうかを判断するのは現実的ではないようにも思える。医療行為は、もっと全体的に、一貫した行為のプロセスとして捉えるべきではないだろうか。

 例えば、上掲の解説のなかの医行為に該当しないとされた行政解釈には

握力、肺活量、血液、血液型、血沈、糞便(寄生虫のみ)、尿、淋菌および梅毒の各検査の結果判定(その結果に基づき病名診断等をしない場合)(昭47・6・1医事七七号・他)

という例示がある。これに即して言えば、心理職が心理検査を単独で行い、病名診断をしない範囲で結果判定を行うことは医行為とは言えない。それは分かるのだが、病院の中で、診断の一環として検査をすれば、それはやはり医行為の補助にあたるのではないだろうか。


 医療行為というのは、診断の初期の段階から人の命に関わる重大な責務を負っている。例えば、胃もたれがあった時に自分で胃薬を飲むのは医行為ではないが、病院で診断を受けた上で胃薬を処方してもらうのは医行為にあたるのではないか。診断にあたって、一般の人が行えば傷害にあたるような行為は何1つしていないかもしれないが、それはあくまで結果的に「胃薬だけで治る」と診断されたからそれで済んだだけのことであって、場合によっては、早期の胃癌であり手術が必要となるケースだってある。要するに、医行為というのは、個々の行為ではなく、診断から治療に至る包括的なプロセスのことを言うのではないだろうか。であるとするなら、精神科領域にあっても、心理職が診療の補助行為の一環として行う行為はやはり医行為(誤解を招くのであれば「医療行為」としてもよい)にあたるのではないかと、私には思える。

 いずれにしても、「心理職の行為は医行為には該当しない」という論点は、国資格化を推進する論拠にはなりえない。

 次回に続く。