じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
桜の紅葉(黄葉)が始まった。今年の秋は雨が殆ど降らないせいだろうか、他の樹木もそうだが、全般に鮮やかな紅葉(黄葉)が期待できそう。


10月19日(木)

【思ったこと】
_61019(木)[心理]学会年次大会に参加する意味(2)研究テーマに関わる生涯発達心理学

 昨日の日記の続き。年をとってきたせいか、最近は、「長期的な時間の流れの中に各種発表を位置づける」という新たな視点を持つようになってきた。

 例えば、50歳代や60歳代の方が何らかの研究発表をされたとする。これまでなら、取り上げられたテーマの単発的な内容に関心をいだくことが多かったが、最近は、そればかりでなく、その研究者の過去30〜40年を振り返り
  • どういう立場を主張してこられたか
  • 研究テーマはどのように変遷したか
  • テーマや研究方法には一貫していたか、それとも途中でパラダイムシフトがあったか
ということにも興味をもつようになった。




 3月16日の日記に書いたように、例えばガーゲン(Gergen)はかつては実験社会心理学者として知られており教科書も執筆していたが、今や社会構成主義の第一人者であり、同時に、最も痛烈な実験心理学の批判者と目されている。さらには、社会構成主義の枠組みの中でも、ガーゲンの主張は10年単位で変わっていると指摘されている。

 大学院生時代、就職直後、10年後、20年後、...という流れの中で、方法論を劇的にチェンジした研究者はけっこう多いのではないかと思う。いや、何十年も同じ方法だけに固執しているのでは進歩がなく、誰でも日々更新があって当然なのだが、連続的な変化ではなく、何かをきっかけに突然変貌(変節)されたケースというのは、なかなか興味深い。「心理学者は何をきっかけに変貌(変節)するか?」というのは、それ自体、心理学の研究テーマになりそうだ。




 方法論や基本的立場は一貫しているものの、研究テーマをいろいろに変えるという人も少なくない。これは、各研究者の勤務先の事情にもよるだろう。もっともそんな中でも、テーマあるいは対象を変えずに何十年も研究してこられた方もあれば、中期的なテーマを設定して次々と切り替えていく人もいある。そのほか、多種類のテーマを同時に抱えている人もいれば、単一のテーマに深く関わろうとしている人もおられて興味深い。

 ちなみに私自身は、テーマについては
  • ハトを被験体としたオペラント行動の実験(卒論)
  • 食物嫌悪条件づけ(修論、博論)→一部、食心理学の領域へ
  • 乱数生成行動、行動変動性→一部、創造性の領域へ
  • 幼児の漢字学習→行動変動性改善と合わせて、発達障害改善の領域へ
  • 能動主義と生きがい→高齢者福祉、地域通貨活用など
  • 方法論一般→社会構成主義や質的心理学と、行動論的な視点との統合
というように、結構いろんな対象に関心をいだいてきた。しかし、そのどれをとっても、「行動の原因を外部環境との関わりの中に求める」という点では、卒論生の頃からずっと一貫しており、かなり頑固一徹な部類に属するのではないかと思う。多少変わったかなあと思われるのは、長期的、あるいは全人的な視点を重視するようになったということか。


 次回に続く。