じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
光る座主川(旭川からの用水。撮影地点はココ)。東西方向に流れているため、昨日の「廊下」同様、秋分の前後に限って、西から夕日が差し込む。春分の前後にも同じ現象が見られるが、秋のほうが水量が多く迫力がある。



9月24日(日)

【ちょっと思ったこと】

連休返上

 土日はもっぱら研究室に籠もって
  • 9月29日締切の個人評価データのWeb入力
  • 10月2日締切の紀要論文執筆
  • 10月第一週の授業準備
  • 書けん申請書のための資料収集
に追われた。

 個人評価データの中で一番大変なのは、各授業科目それぞれについて、目的、達成状況、授業評価アンケート結果分析、今後の改善計画などを記述式で入力しなければならないことだ。入力年度は2003年度から2005年度までの3年分となっているのだが、特に大変なのは2005年度分の入力である。諸般の事情により、あの時は、なんと、21科目分も担当したことになっているのだ(←新旧カリキュラムが異なる授業科目名で登録されている場合があるので、実際に出講したコマ数は18〜19コマ分となる)。

 「書けん」は、岡大では全教員に申請することが義務づけられている。今年は、学内で申請書下書きの「添削」までしてくれることになっており、近々その結果が戻ってくるという。

 もっとも、現在私は、全学の「教育戦略チーム」チーフのほか、全学の留学生センター運営委員、部局の留学生専門委員、学生生活委員など全部で12の委員を仰せつかっている。病気療養の方がつとめていた委員の交代ということで、後期からはさらに学部の広報・交流委員を仰せつかっており、見学に来られた高校生たちの案内や広報冊子の編集にあたらなければならない。もし「書けん」申請が通ったとしても、率直なところ、これだけの管理運営業務を背負いながら、責任をもって研究計画を遂行できるだけの時間的余裕があるかどうか自信が無い。

 余談だが、最近は、土日に出張すると、その日数分、平日に振替休日をとらなくてはいけないことになっている。土日に仕事をしても手当は出せないが、タダ働きさせられないので、その分、平日に休みなさいという趣旨のようだ。先日の連休(16〜18日)の日本教育心理学会第48回総会の時も、旅費は出ないものの形の上では出張扱いとなっている。9月25日(月)は、そのことによる振替休日に設定してあるのだが、上記の作業は全く終わっていない。9月28日(木)も同様で、形だけの振替休日。9月29日(金)は、作業が片付けば午後から休めそう。


【思ったこと】
_60924(日)[心理]日本教育心理学会第48回総会(8)学生は質的心理学の教育から何を得るか

 今回は第1日目の夕刻に行われた、準備委員会企画シンポジウム:

●学生は質的心理学の教育から何を得るか<

について感想を述べることにしたい。




 さて、このシンポは、タイトルだけ見て、この時間帯ではいちばん面白そうだと思って参加することに決めていたのだが、会場に移動する途中になって、じつは、このシンポの企画者・話題提供者は、隣の研究室のT氏、また、指定討論者2名は、いずれも、岡山大に在籍していたMu氏とMi氏であることに気づいた。話題提供者と指定討論者6名のうち3名が岡大・文学部にゆかりのある教員ということからみると、おや?、いつから私の職場が質的心理学研究の拠点になっていたのか? とちょっと意外な気がした。

 もっとも私が記憶している限りでは、大御所のMi氏は、岡大ご在職中は、量的研究中心にずっと授業をしてこられた。これは、当時、社会心理学講座のスタッフが実質的にMi氏お一人だった時代が長く続いていて、社会心理学のあらゆる研究方法を伝授しなければならないというお立場があったためかと思われる。今回の指定討論の中でもMi氏は、岡大で質的方法を教えたのは、グレーザーとストラウスの本を大学院生と一緒に読んでいた程度であったと述べておられた。

 私の記憶している限りでは、岡大で質的研究が盛んになったのは、今回の企画者のT氏や、すでに定年退職されたA氏、さらに、今回の指定討論者Mu氏が来られた後のことであった。もっともその時も、研究対象が「文化」であったという印象のほうが強く、研究方法が質的であるという印象はあまり受けていなかった。

 それと、私個人が質的研究に関心を持ったのは、岡大内部からではなく、むしろ、『現場心理学の発想』(やまだようこ編)や『心理学論の誕生:「心理学」のフィールドワーク』(サトウタツヤ・渡邊芳之・尾見康博)などの書籍から受けた影響のほうが大きかった。学内では、卒論指導の分業化が進んでいたこともあって、卒論査読以外の場で質的研究にふれることは殆ど無かった。

 そんなこともあって、とにかく、話題提供者と指定討論者6名のうち3名が岡大・文学部にゆかりのある教員であったということには少々驚いた次第であるが、クリティカルシンキングの観点から見直してみるに、これは単に、今回の学会総会の会場が岡山であったためだけなのかもしれない。




 さて、前置きが長くなってしまったが、シンポではまず、T氏が、この企画の趣旨を述べられた。それによれば、今回の話題提供者の共通点は2005年3月に刊行された

動きながら識る、関わりながら考える〜心理学における質的研究の実践〜

に携わったことにあったということだそうだ。質的心理学の専門書は何冊も出ているが、学部の授業では、心理学以外の専攻者も受講する。また応用分野への配慮も必要ということからこの本が生まれたということであった。




 続いて話題提供。1番目のI氏は、
  • 子どもの視点に帰る
  • 心という「内」に向かいがちな視点を「外」へと転換
  • ふだんのライフスタイルの見直し
  • 対話の重要性の気づき
といった内容で、初習者が実際に街に出てデジカメで撮影したり、そこに住む人たちと対話しながら質的研究の態度を学ぶプロセスを紹介された。

 率直な感想としては、この授業は、I氏のようなすぐれた指導教員でないとうまくできないだろうなあ、ということだ。今年の1月15日に拝聴した田垣氏の講演の中でも指摘されたように、

●量的研究は、質が悪くても、なにかをしたような体裁を保つことはできる。しかし、質の悪い研究は,....「中学や高校の文化祭の発表のようなもの」

という可能性は常にある。研究成果のレベルは別として、とにかく、質的研究の「態度」や「心構え」を身につけさせるような教育というのは、理屈だけでは難しい。フィールド研究の体験を豊富にお持ちなI氏であればこそ指導できるのではないかと思った。

次回に続く。