じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
岡山県南部は久しぶりのまとまった雨。9月6日7時までの24時間積算雨量は60ミリに達した。写真は路上で見かけたカエル。

ちなみに9月5日の最高気温は23.0度(朝9時以降では21.8度)、最低気温は20.1度。セミはすっかり姿を消した。夜になるとアオマツムシの大合唱。



9月6日(水)

【ちょっと思ったこと】

誰も知らなかったはずなのに

 各種報道によれば、秋篠宮妃紀子さま(39)は6日午前8時27分、東京都港区の愛育病院(中林正雄院長)で男の子(親王)を出産された。男子皇族の誕生は秋篠宮さま以来約41年ぶり、天皇陛下の孫の世代では初めての男子となる。皇位継承順位は、皇太子さま、秋篠宮さまに次いで第3位になる。

 このおめでたいニュースのことで思ったのだが、私の知る限りでは「男の子か女の子か」ということはご出産前には一切報道されていなかった。また、この出産の約2時間後に記者会見した金沢一郎・皇室医務主管は、お子さまの性別については、(秋篠宮両殿下とも)知りたくないとのお考えだったことを明らかにしたという。しかし、世間でも政界でも、かなり以前から、男児ご出産ということが暗黙のうちに想定されていたような印象を受ける。

 公式には誰も語らず、何も報道されず、誰も知らなかったはずなのに、じつは国民みんなが察知していて、男の子であったことを誰も驚かないというのは、いかにも日本的であると感じた。

【思ったこと】
_60906(水)[心理]日本行動分析学会第24回年次大会(3)工学と行動分析

 昨日に引き続いて、某私立大学長のI先生の公開記念講演に引き続いて

●テクノロジーと行動分析

というテーマの公開シンポが開催された。

 なお、前回までの連載では、偉大な業績を残され、かつ私自身個人的にお世話になっていた講演者に敬意を表して「先生」とお呼びしていたが、以後は、過去の報告・感想と同様、「○○氏」の呼称で統一させていただくこととしたい。

 シンポではまずS氏が、

●究極のローテクはハイテクである:行動のエンジニアリング

と題して、興味深い話題を提供された。ちなみにこの大会は休憩時間が全く設定されておらず、I先生の講演終了後殆ど間を置かずに別教室でこのシンポが始まっていた。I先生にご挨拶していたことなどもあって、私が入室した時にはすでにS氏の話が始まっており、冒頭の肝心な部分を聞き逃してしまった。

 あくまで途中から聴き取った内容に限られるが、S氏はまず、学問研究の世界で
  • 工学はサイエンスではない
  • テクノロジーより理論
という風潮が根強いことを指摘された。このことで思ったのだが、スキナーの研究は、少なくとも1970年代前半頃までは「行動工学」と冠して紹介されることが多かった。しかし、最新のウィキペディアの記述を見ても「行動工学」という言葉は見当たらない。どこかで意図的に「工学」の呼称を避けようという動きがあったのだろうか。

 同じウィキペディアで「工学」を参照すると
工学(こうがく、engineering)は、科学、特に自然科学の蓄積を利用して、実用的で社会の利益となるような手法・技術を発見し、製品などを発明することを主な研究目的とする学問の総称である。大半の分野では数学と物理学が基礎となる。

工学と理学の違いは、理学がある現象を目の前にしたとき「なぜそのようになるのか?」を追求するのに対して、工学は「どうしたら目指す成果に結び付けられるか」を考えることにある。すなわち、工学ではある実験によって一定の関係が得られたら、それがなぜ起こるのかにはあまり関心を寄せず、その実験式をとりあえず受け入れる。なぜそのような関係になるのかを追求するのは理学の役目だからである。

また、理学では「思想」なり「信条」といったことをその理論内に取り込まない傾向があるが、工学では「設計思想」が重要であり、また各工学の学会(電気学会、土木学会など)では信条規定が定められている。

更には、理学では「安全」といった概念が扱われない傾向があるが、工学では安全が重要なウェイトを占める。

【以下、略】
となっている。この引用箇所において、「製品などを発明することを主な研究目的とする学問」という部分を「生活環境の改善、問題行動の消去や問題が起こらない方向への転換、望ましい行動の確立・維持、より能動的で主体的な行動が実現できるような機会の保障」というようにでも書き換えれば、行動分析の研究分野のかなりの部分は、工学の範疇に収まるようにも思える。但し、「なぜそのような関係になるのか」という疑問には、「関心を寄せない」のではなく「行動随伴性の原理で説明が尽くされている」と考えているようには思うが。

 とにもかくにも、「行動工学」というのは、1970年代前半までとはかなり異なる意味で使われるようになってしまった。しかし、S氏が強調されたように、ハイテクが進歩しても、その根底にある行動の基本原理は変わらない。ハイテクを使う人間行動も同様であろう。

次回に続く。