じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真] 今年は雨が多いため、雑草の繁殖・成長がすさまじい。楽天版じぶん更新日記(6/6付)に掲載した「ガザニア、天人菊、撫子の混植花壇」なども、わずかの期間のあいだに雑草が一斉に茂り、手がつけられなくなりそう。

 なお、環境整備のボランティアに参加してくださる方の中には「園芸植物と雑草との見分けがつかない」と言われる方があるが、見分け方は簡単だ。花壇の周囲にも同じモノがいっぱい生えていれば雑草、花壇の中だけに生えていれば園芸植物である。心理学の研究でも大切なことだが、対象者の「内面」を見つめるのではなく、対象者を取り巻く周囲の環境にも目を向けるべし!



7月11日(火)

【思ったこと】
_60711(火)[教育]高等教育セミナー(6)大規模・私立大における教職員評価制度の導入経緯と成果

 昨日に続いて

●教員評価・人事制度の検証と活用 〜導入・改善状況/業績評価手法/処遇への反映〜

に関するセミナーの参加感想。




 3番目の話題提供は、大規模・私立大における教職員評価制度の導入経緯と成果に関する内容であった。まず大学の規模だが、学部学生数はおよそ3万人、専任教員数はおよそ1000人。この大学には附属学校や短大もあり、それらの教職員、学生、生徒を含めるとなんでも5万7000人の規模になるというから大変なものだ。岡山県北の新見市の人口は約3万8000人だと言われるから、1つの大学だけで自治体が誕生してしまうほどである。もっとも、私の大学の場合は、学生総数14036人(学部学生数10763人 大学院生数3273人、昨年5月のデータ)に対して専任教員数は1430人となっており、教員の規模だけから言えば、私の大学のほうが大規模ということになる。

 規模が大きく、しかも歴史が古い大学では、新制度を導入するにあたっていろいろな困難があった模様である。そんななか、
  • 質的にも高くて卓越している業績を顕彰
  • 低い評価を受けた人は、自分の弱点を知り、自分が何をすべきかを理解し、能力を高めてもらうように改善を促す
  • 教員全体に細かい査定を行って序列をつけようとするものではない
という趣旨で導入が図られたという。




 導入された評価制度では、まずS、A、B、C、Dという5段階の自己申告が行われる。評価委員会の最終評価はA、B、Cの3段階であり、A評価者には、賞与(夏季、年末)に特別手当として支給されるという。いっぽうC評価者であって2年間の経過措置後にも執務状況に改善が見られない場合は賞与からの減額が行われる。過去3年間について言えば、教員でのA評価者はおおむね25〜30%、C評価者は1〜3%程度であった。A評価者は高校教員に多く、このことがA評価者全体の比率を高めているらしい。

 賞与以外にも、在外研究制度(1年)あるいは研究休暇制度(サバティカル)への反映も検討されているとのことであった。

 教員の業績評価自己申告では、研究や教育等についての各項目(5項目14細目)を5段階評価するほか、なぜそのように評価したのかという理由を記述する欄があった。




 私が特に関心を持ったのは、学生による授業評価の部分である【以下、特に断らない限り「評価」と略すことがある】。上記の自己申告表では、冒頭に「授業評価の成績」というのがある。但し、学生による授業評価の平均値をダイレクトに反映するような細目は含まれておらず、おそらく理由記述欄でデータを示すことになるものと思われる。

 学生による授業評価アンケートには「この授業について」(←受講生自身についての評価)7項目と、この授業の教員についての評価4項目に続いて、総合評価:

●この教員の授業を10点満点で評価してください。

という項目があった。特徴的なのは、単に数値をマークするだけでなく、その理由も書いてもらうという点であった。これによって、評価が高い、低い、いずれの場合にも、ある程度その原因を探ることができるものと思われる。

 この総合評価は、平成14年度までは、教員業績評価には反映されていなかった。平成15年になって、某学部で
  • 評価平均値が一定レベルに達しない教員は昇任させない
  • その数値の高い教員上位5%を上記「A評価」とする
というように改められたところ、それまで6.8前後で水平に推移していた教員全体の平均値が、その後、7.0、7.2というように少しずつ増加し、直近では7.5前後まで上昇した。もっとも、このあたり、平均値を押し上げた要因が、全教員の努力によるものなのか、極端に低かった教員が危機感をもって授業改善に努めたためなのかについては、残念ながら詳細情報を伺うことができなかった。

 某学部ではこのほか、職位別(兼担、非常勤、講師、助教授、教授別)による評価の違い、学年別、講義形態別、授業規模別などで評価がどう異なるか、などについて詳細な分析を行った。それにより、
  • 演習、実験、実習科目のほうが講義科目より0.3点高い。
  • 必修科目はそれ以外の科目より総合評価が高い。
  • 200名以上の大規模授業は、40名程度の小規模授業より評価点が低い。
などの結果が得られたという。

 時間が無くなったので、次回に続く。なおこの連載はあと1回で終了とする予定。